鉄道大手が今、「ベンチャー投資」に走る事情 東急、阪急阪神、西鉄が相次いで参戦
たとえば、インターネット仲介型の不動産会社イエッティ(2012年設立)は、あえて店舗を置かず、営業マンとのチャットで物件探しができることを売り物とする。インターネットで展開していることから顧客の居住地は広範囲に及ぶ。ネットという特性上、若年層の顧客も多い。
こうした理由から、沿線外の若い顧客を東急沿線に呼び込むことができるという。まさに沿線活性化にダイレクトに資する提案だ。一方で、無店舗という強みは、地域性が弱いことの裏返しでもある。この弱点を「東急と組むことで補完したい」と、担当者は壇上で力説した。
2014年設立のセンジュは「子育てと東急」に着目し、子供向けに職業インタビューやミニインターンなどの職業教育を提案した。「10代の子供たちが東急沿線に住んでいてよかったと思えるようにしたい」というのが狙いである。
子供ではなく、中高年齢層をターゲットにしたビジネスプランもある。2009年設立の笑屋は、同窓会代行サービスを全国で展開する。同窓会で同級生と再会する機会を増やし、沿線コミュニティを永続させたいという。
8つの最終選考に漏れたビジネスプランにもユニークなものは多かった。自分の足の写真を送ればピッタリの靴を推薦するサービスから、徘徊者の早期発見サービスまで、あったら便利と思うようなアイデアが続出した。
受賞3社が選定された理由
審査の結果、最終選考を通過して「東急賞」「渋谷賞」「二子玉川賞」を受賞したのは3つのビジネスプランだ。
グランプリに相当する東急賞を受賞したアベジャ(2012年設立)が提案したプランは、カメラ映像から来店者の性別・年齢を判別。さらに行動パターンや滞在時間を可視化することで、売り上げ予測の精度を高めていくという。
準グランプリに相当する渋谷賞を受賞したアクアビットスパイラルズ(2009年設立)は、街や自宅のさまざまなものにICチップを貼り付けるというもの。それをスマートフォンが読み取ると、即座に知りたい情報が提供されたり、ショッピングができたりするというシステムだ。
「落とすのは惜しい」という理由で急遽、新たに設けられた「二子玉川賞」を受賞したのは、サステイナブルエネルギー開発(2014年設立)。東急沿線で発生した有機系廃棄物を有効活用し、エネルギー(電機と熱)の創出と資源(有機肥料)の回収を行うというモデルだ。創出したエネルギーは地域に供給し、肥料は地域で農産物の生産に活用する。
東急電鉄の野本弘文社長は「いずれもこれからの日本を背負って立つ企業ばかり」と満足げに語る。これら3社は今後東急グループの支援を受けて事業化に向けた検討を始める。受賞に至らなかった企業についても「事業化を検討してみたい会社が1~2社ある」という。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら