顧客との絆づくり型O2Oで世界にも挑戦する無印良品(前編)《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》
ネット会員約326万人のうち、実際にネットストアで過去2年間1回でも買い物をしたことがある人は約4割しかいなかった。約6割の会員が登録はしていてもネットでは買い物をしていない。
奥谷氏は、次のように分析する。
「無印良品の店舗は、全国に約360店舗もある。わざわざ配送料を払ってまでネットで買わないのでは。それでもネット会員のうち、150万~160万人がメルマガ配信の登録をしてくれている。6割以上がネットを利用していないのにもかかわらず、ネットストアの購買販促を狙った内容のメールを配信していた。そこで、6割の会員に対してもっとリアル店舗の販促施策を実施しようと考えた」
この「6:4の法則」が無印良品のあらゆるO2O施策の底流にある。顧客時間をO2Oでつなぎ合わせることで、店舗送客を実現している。
たとえば、ネットストア会員には、誕生月に500円のクーポンを配信している。しかし、これまでは、ネットストアでしか利用できないクーポンだったため、十数%しか利用されていなかった。そこで、無印良品のギフトカードを活用し、ネットクーポンを店舗で利用できるようにした。ギフトカードに、ネットクーポンの金額をチャージできるようにシステムを変更したのだ。
「ネットストアでの買い物の平均単価は1万円、店舗だと2000~2500円。500円の持つ価値が全然違う。ネットストアでチャージをしてくれて、店舗に出向いて使ってくれるようになった」と奥谷氏は、手応えを語る。
各店舗に設置しているクーポン発券機も活用した。クーポン発券機は、現在、全国23店舗で導入済みで、もうすぐ80店舗に拡大予定。ソフトバンク系のクーポン企画会社・ソフトバンクギフトの協力で実現した。レジのシステムを変更すると、億単位で投資が必要だが、クーポン発券機だと1台数十万円で導入できるという。比較的低コストでO2Oを実現できる。
ネットストアの会員に、メールで500円引きなどのバーコード付きクーポンを配信する。会員が、スマートフォンや携帯電話でバーコードを表示し、店舗に行って発券機で読み取ると、クーポンがもらえる。IDごとにユニークなバーコードを発行しているため、何人の人が何回どの店舗に行ったのかがわかり、CRMが実現できる。最近は毎月1回ほど配信している。全国でキャンペーンを展開したため、地方のエリアにおいても、ネットから店舗への集客効果を実感できたという。