生活保護に厳格化の波、拙速改革の落とし穴
お笑いタレントの河本準一氏の話題に端を発した生活保護騒動。「受給者が働かずにパチンコをしている」「まじめに働く人が損をする欠陥制度だ」──。騒動の勃発後、報道が生活保護のバッシングともいえる状況になり、保護受給者への逆風が続いている。
政府、与野党それぞれの生活保護制度の見直し論議も進んでいる。厚生労働省の特別部会は、今秋の「生活支援戦略」の最終取りまとめに向け、7月にも生活困窮者対策について本格的な審議を開始する見通し。片山さつき参議院議員や世耕弘成参議院議員らの河本氏への疑惑追及で、今回の騒動に火をつけた自民党も、今国会中に生活保護法改正案を議員立法で提出する予定だ。
制度見直しの議論は始まったばかりだが、バッシングの高まりを受け、制度利用の厳格化の流れができつつある。
そうした中、弁護士らで構成する生活保護問題対策全国会議は、6月25日、民主、自民、公明の3党が合意した社会保障・税一体改革の内容を受け、「生活保護制度を利用せざるをえない社会構造に目を向けていない」として、抗議活動を実施した(上写真)。しかし、デモの参加者は少なく、見直し慎重派の声の広がりは限定的だ。
「このままでは生活保護が本当に必要な人にとって制度がますます遠い存在になる」。NPO自立生活サポートセンターもやいの稲葉剛代表理事はそう懸念する。
狙いは保護費抑制と信頼回復
生活保護は憲法上の「最低限度の生活」を保障するため、生活困窮者を保護する仕組み。受給には金銭などの資産や生計の手段が十分でないことが前提だ。