「安定化」が課題の中国、世界経済の牽引役は返上

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最大の輸出先である欧州の深刻な景気後退が大きな打撃となった。鉱工業生産も減速しているが、電力消費量からすると、実態はもっと低いのではないかと、中国の統計に対する疑惑が再浮上しているほどだ。多摩大学大学院の沈才彬客員教授は「第2四半期は8%割れ、下手をすれば7%割れのおそれもある」と見る。それでも、「対策を打てば、年後半から回復して、年間目標はクリアするだろう」(沈教授)と話す。

実際に、金融緩和の発表は、5月の景気指標が発表される6月9日の前に行った。市場の期待を先取りし、不安を払拭しようとの配慮だ。

市場関係者からは「中国は先進国とは異なり、金融緩和の余地があり、いざとなれば大規模な財政出動が可能だ」と再び世界の牽引役となることまで期待する声が聞かれる。

しかし、中国問題の専門家は一様に、08年9月のリーマンショック後の「4兆元」景気刺激策のような大盤振る舞いの可能性を否定する。「高成長率の実現による世界経済の牽引役はもう御免被りたい、と思っている」(田中特別研究員)。

00年代に中国は平均10%を超す高い経済成長率を実現し、10年のGDPで日本を抜き去り第2の経済大国となった。リーマンショック後の「4兆元」対策は世界経済を救い、大いに面目を保った。しかし、「4兆元」は国内に負の遺産をもたらした。


「4兆元」の負の遺産

もともと胡錦濤指導部は「経済発展方式の転換」を掲げていた。経済が高度成長時代から安定成長軌道にソフトランディングすべき時期に来たという認識を持っているからだ。

転換の第一は、成長の原動力をこれまでの投資主体(図)から消費にシフトすることだ。沿海部と内陸部との貧富の格差を是正する必要がある。そのために、最低賃金の急速な引き上げも行っている。第二に、サービス産業を育成し、工業に依存した状態から脱却することだ。世界の工場として輸出偏重になっている状態から、内需にシフトする。第三に量から質への転換。安い労働力、安い資本、資源エネルギーの大量投入ではなく、環境に配慮し生産性を上げていくためのイノベーションの重視などである。


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