危機の時代に「カリスマ的救済者」の出現が持つ歴史的意味/総選挙での自民党圧勝と再魔術化する世界

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現在、世界は危機の時代である。だからこそ、この危機によって、再びナチス体制のような魔術が復活するのではないかと人々は不安におののいている。とりわけ深いトラウマに苛(さいな)まれているドイツでは、昔の記憶が頭をもたげるのだ。

ナチス関連法のあるドイツで、あからさまなナチ体制の出現はありえないだろうが、「過ぎ去ろうとしない過去」(ナチ論争を惹起した歴史家のエルンスト・ノルテ〈1923~2016年〉の言葉)は、つねに頭をもたげてくる。それがここ10年におけるAfD(ドイツのための選択肢)の躍進であった。現在ではドイツ国会で第2の議席をもつ政党である。

ドイツAfD躍進の背景

その理由は、2015年に顕著になった大量の移民流入が、ドイツを含む欧州全土に反移民主義を植え付け、外国人排斥運動へとつながっていったことである。

しかもコロナそしてウクライナ戦争によるドイツ経済の失速によって、旧来の政党であるドイツ社会民主党(SPD)や、同盟90/緑の党、ドイツキリスト教民主同盟(CDU)などから、AfDへと乗り換える人々が増大した。もちろん政権を獲得するには至っていないが、不満の声は新しい右翼政党への関心を呼び覚ましている。

そこにはヒトラーのようなカリスマ的救世主はいない。AfDそのものも、ナチスのような体制を目指しているとは思えない。しかし、人々の経済的不安定が、ますます新しい政党とカリスマを期待する条件をつくりだしていることは間違いない。

しかしこの場合、問題はドイツ国内だけの問題にとどまらない。アメリカのトランプ政権や、イタリアのメローニ政権、ハンガリーのオルバン政権、そして日本の高市政権などの一種のカリスマ的性格をもった人物による、旧来の法と秩序を崩壊させる可能性をもった政権の登場である。

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