春節の「中国人インバウンド」は激減…それでも日本にやって来る個人旅行客の胸の内。中国人旅行者はパンダ・レアアースと並ぶ外交カードに

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日本のインバウンド業界に打撃を与える経済威圧は、段階的に実施された。

➀MICE(企業・団体活動としての旅行)の中止

中国の行政機関や国有企業などは当局の「渡航自粛」呼びかけに応じ、訪日視察、展示会、学術交流などを自発的に中止した。国際的なMICE誘致を進める日本にとって、中国の公的団体は最大の顧客層であり、ここを狙い撃ちした形だ。

②団体旅行とクルーズ船の制限

当局から口頭指導を受けた旅行会社が訪日ツアーの販売を制限。クルーズ船も目的地を日本から韓国へ変更した。

③個人旅行の抑制

最もコントロールが難しいのが個人旅行者だ。中国政府は日本で地震が起きたり、中国人が被害に遭う事件・事故が発生するたび「日本の治安悪化」を主張し、渡航自粛を呼びかけている。ただ、国民も飽きたのかSNSでの反応は限定的になってきている。

より即効性のある手段として用いられたのが、航空便の減便だ。現地の報道によると2026年1月の中国本土から日本への航空便の欠航率は47.2%に達し、前月と比べて7.8ポイント上昇した。

フライトが減れば利便性が低下するだけでなく、運航している便の航空券価格が上昇するため、コスパに敏感な中国人の旅行意欲を削ぐことができる。

各方面への圧力によって中国人の訪日旅行は急速に冷え込み、日本政府観光局(JNTO)によると、昨年12月の訪日中国人は前年同月比45%減少した。

外交カードの1つになった「中国人旅行者」

日本は中国人の海外旅行先人気ランキングで常にトップを争っていたが、今年の春節はどのランキングを見ても10位にも入っていない。

人気の旅行先である日本への渡航を遮断すれば国民の不満を招きそうなものだが、中国政府が意に介さないのは、世界の観光市場において中国人の存在感が高まり、多くの国が中国人旅行者に利便性を提供するようになったからだ。さらに中国政府は日本以外の国と関係を改善し、自国民の海外旅行において選択肢を広げている。

23年8月、東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出で日中関係が悪化した後も、中国政府は日本に圧力をかける一方で、シンガポール、マレーシア、タイの東南アジア3カ国と相互ビザ免除を実施した。中国の旅行業界は、日本から東南アジアへ送客をシフトした。

最近も経済や観光の低迷を打破するため、中国に対して短期滞在ビザを免除する国が続出している。

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