マンション流通革命の前に立つ業界団体の壁 不動産価格推定サービスは波を起こすか
しかし、実際に物件の内見から売買に進む段階で、ソニー不動産は宅建業者として取引をサポートすることになる。この時には宅建業者として事実と異なる情報は訂正する責任が生じるが、当初の売り主提供情報と訂正後の情報が異なればトラブルになる可能性はある。売り主が自由に設定できる売り出し価格も、設定次第では売却に時間がかかる。そうしたリスクを売り主が十分に理解しているかどうかは疑問だ。
おうちダイレクトでは売り主から仲介手数料を基本的に取らない仕組みとなっているが、サービス提供者として売り主に対して教育を行う責任はあるだろう。11月5日の発表記者会見でも、売り主仲介手数料は無料と強調していたが、プレスリリースには「今後見直すことがあります」との注釈が付いていた。当初想定している以上に売り主のサポートが必要になれば別途費用を請求せざるを得ないかもしれない。
筆者が注目するのは、各社から相次いで登場している不動産価格推定システムの中身だ。どのようなデータを使ってどのような技術で推定価格を算出しているのかはブラックボックスだが、実際に同じ物件で推定価格を算出することで各システムの推定精度を比較できるようになるかもしれない。
各サービスで中古物件の価格を調べてみた
「おうちダイレクト」が11月16日にオープンしたので、すぐに売り出し物件をサンプルにして各システムで推定価格を算出してみた。売り出し価格が約5000万円の物件の名称を入力すると、イエシルとプライスマップともに物件を選んで推定価格を表示してくれた。
イエシルの場合、物件の階数と専有面積から部屋を特定した推定価格が表示され、結果は35%も安い約3200万円だった。プライスマップの場合、物件の階数の坪単価が表示されるので専有面積をかけて計算すると約3900万円となった。さらに現在は推定機能だけをリリースしている「ふじたろう」では、地図にプロットされたポイントをクリックして物件を探し、階数と5平方メートル刻みの専有面積を選んで約3500万円という結果となった。
各サービスの推定価格には3200万~3900万円という大きな開きがあり、おうちダイレクトの売り出し価格とはさらに大きな差があった。その理由が、売り主が自ら高く設定したためか、ソニー不動産の推定価格が高いためかは分からないが、こうした売り出し価格と推定価格との違いを買い主側がどう判断するだろうか。今後の中古マンションの売り出し価格の設定に影響を及ぼすかどうかがポイントだ。
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