マンション流通革命の前に立つ業界団体の壁 不動産価格推定サービスは波を起こすか

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今年10月、不動産公取協は東証1部上場のリブセンスに対し、「不動産の表示に関する公正競争規約」に基づいて指導を行った。リブセンスは「ジョブセンス」の名称で展開する求人情報サイトのほか、不動産情報サイトなども運営してきた。そのリブセンス今年8月、ネット上で誰もが利用できる不動産価格推定システムを先行公開。おうちダイレクトと同様の中古不動産売買サービス「IESHIL(イエシル)」の立ち上げを進めていたところだった。

不動産公取協では、リブセンスに対して指導を行った事実は認めたが、個別案件の内容は明らかにできないとしている。ただ、一般論として売却する意志のない所有者の物件を含めて推定価格を自由に査定することは消費者に売り出し中の物件と誤解を招く懸念があることや、分譲マンションだけでなく住戸単位の取引ができない賃貸マンションでも査定価格を算出していることなどを問題視しているようだ。

おうちダイレクトに対しても「一般消費者に誤解を与えるような表示があれば指導を行っていく」(不動産公取協事務局)考えだ。

これらのサービスの核となる不動産価格推定エンジンは、ビックデータや機械学習などに基づいて開発された新しい技術である。すでに米国の不動産テクノロジー企業のZillow(ジロー)やRedfin(レッドフィン)などが2009年頃から同様のサービスを提供開始して米国の不動産流通市場で成功を収めている。ソフトバンクの孫正義社長が言う「米国市場で成功したビジネスは数年後に日本市場にも普及する」という“タイムマシン経営”の考え方にならって、日本でも同様のサービスを導入しようと一斉に技術開発が始まっていた。

不動産価格推定サービスに参入続々

リブセンスやヤフー・ソニー不動産連合だけでなく、10月には楽天と提携関係にある不動産物件検索サイト「ホームズ」のネクストが「プライスマップ」をスタート。さらに2015年内には賃貸管理・不動産投資会社のプロパティエージェントも「ふじたろう」の名称で不動産価格推定サービスをリリースする予定だ。

不動産公取協はソニー不動産と、売り出し物件の情報が事実と異なった場合の取り扱いについて国土交通省不動産業課も含めて事前に協議を行った。おうちダイレクトでは、売り主がみずから査定価格を調べ、みずから売り出し価格を決め、みずから物件情報を掲載するという仕組み。情報が事実と異なった場合でも宅建業者を取り締まる公取協規約や宅建業法の適用外という解釈となった。

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