製鉄所発電の実力、電力不足が追い風に

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追い風も吹いている。5月28日、経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会は2030年の電源構成比を4案に絞ったが、そのいずれの案でもコージェネレーション(電熱併給)を現状の3%から15%に増やすとしたのである。

コージェネとは、発電時に発生する排熱を冷暖房や給湯などに利用するシステム。高炉ガスを使う共同火力やIPPの一部はコージェネ方式といえる。エネルギー問題に詳しい一橋大学の橘川武郎教授は「コージェネを増やすかなりの部分は共同火力という形を取るのではないか」と見る。欧州でもコージェネの中核を担っているのは共同火力という。

増設には課題も

当の鉄鋼メーカーからも「土地を含めて余地はあるので、もっと発電量を増やしたい」(高炉大手幹部)との声が聞こえる。

が、実現には課題もある。一つは設立にかかわる環境アセスメントに時間を要することだ。出力11・25万キロワット以上の火力発電所を建てるには、アセスに約3年半かかる。出力増となった場合、二酸化炭素(CO2)削減目標との整合性もチェックされるため、「発電能力を増やした分、鉄の減産を迫られたり、排出権を買わされたりするのはたまらない」(高炉大手)と懸念する向きもある。また、「多額の投資になるので、電力会社がいくらで買ってくれるのかも重要」(別の高炉大手)だ。

制度上の問題もある。現行の電気事業法では製鉄所で発電した電力は電力会社の送電網を通さねばならず、隣接する工場などに売ることができない。送電網を使うには託送コストがかかり、「共同火力で作ったとしても、メリットが減殺されてしまう」(橘川教授)。鉄鋼メーカーが電力会社になる日は来るか。

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(山内哲夫 =週刊東洋経済2012年6月9日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

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