VISAが始めたB2B決済は、どこまで便利なのか 銀行に出向く必要がなくなった
同社が「Visa Business Pay」の活用を始めたのは今年5月。「それまでは請求書のリストと預金通帳の記載内容を突き合わせて、支払い(入金)の有無を確認していたが、一つ一つ確認するため、手間がかかっていた」(中山部長)。それが、「Visa Business Pay」導入後は、ウェブ上の支払い履歴一覧を元に、相手が支払い済みか否かを簡単に見分けることができるようになった。
こうした仕組みにより、売り手側では加盟店手数料がかかる一方、請求の手間や請求書誤配送のリスクが軽減され、確実な代金回収が実現する。一方、買い手には、銀行に出向く必要がない、送金手数料がかからないといったメリットが生まれた。支払い額が高額であっても、クレジットカード払いでは領収書に収入印紙を貼る必要がない。
銀行振り込みや口座引き落とし、手形が中心のこれまでのB2B決済では、クレジットカード利用の割合はきわめて少なかった。ビザの調べによれば、日本のB2B決済市場の規模が900兆円を上回るのに対して、クレジットカード決済の利用は約2兆円、比率にしてわずか0.3%にとどまっている。
現在用いられている法人カード(ビジネスカード)は、会社役員などの交際費や出張経費の精算に用いられているケースがほとんどだ。そうした使われ方の制約を克服し、クレジットカード支払いを製品やサービスの購買に拡大することで、白地に近い市場を開拓しようというのがビザの戦略だ。
ビザの日本法人ビザ・ワールドワイド・ジャパンで「Visa Business Pay」開発の中心的役割を担った森田智彦ディレクターは、「B2B決済市場のうち、クレジットカードが対象となりうる市場の規模は500兆~600兆円。特に中小規模や個人事業主にとって、クレジットカード導入のメリットは大きい」と強調する。ビザによれば、先行する米国では、B2B市場でのカード払いの比率は5%近くに達しているという。
「Visa Business Pay」は導入に際して費用がかからないことや、「操作が簡単なこと」(前出のガウディアで請求業務に従事する加藤奈美氏)が魅力だ。また、クレジットカード情報が加盟店側に残らないなど、セキュリティレベルも高い。
「まだ、サービス内容を改良中で本格的なプロモーションをしていないため、9月時点での契約件数は200件程度だが、最近加速度に増えている」と森田氏は手ごたえを感じている。
立て替え払いで事務負担を大幅軽減
立て替え払い(債権譲渡契約)や、独自の審査システムによる短時間での与信判断(売り手から取引情報をもらってから与信完了まで最速5分、平均でも10分以内)により、B2B決済の事務負担を大幅に軽減しているのが、オリックスが出資するベンチャー企業、ネットプロテクションズの「FREX B2B後払い決済」だ。
掛け売りをアウトソースするもので、今年6月時点での導入企業数は約600社。昨年度の取扱高は60億円程度にとどまるが、前年度比約80%の伸びを記録している。
「FREX B2B後払い決済」の仕組みは次のようなものだ。
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