もうひとつ印象的なできごとがあります。
日本に帰国した後、次男さんが一昼夜、家に帰ってこなかったことがありました。まだ中学生。香苗さんは「家出したのでは」と動揺し、警察に届け出ようと思ったそうです。
一方、ご主人は、「絶対大丈夫だ。こんなとき警察に捜索願いを出したら、見つかったときに本人が恥ずかしい思いをする。俺だったらまた殻に閉じこもる」と。
それは息子を信じ、成長を見守ろうとする父親の力強いひと言だったと香苗さんは感じました。
翌朝、次男さんは無事に帰宅。小さな頃に住んでいた街に、ふと出かけてみたくなったそうです。
不登校から始まった子育てと家庭育て
その後、次男さんは高校受験を経て、全日制の高校に進学します。「中学校に行けなかった分、高校には楽しく通いたい」と、運動系の部活動も始めます。そうして現在、高校3年生。大学受験の真っ最中です。
あるとき、香苗さんは次男さんからこう言われました。
「お母さん、もう心配しなくてもいいよ」
その言葉には、不登校の経験を自分なりに受け止め、成長の一過程として消化しつつある次男さんの思いが込められているようでした。香苗さんは別の部屋に駆け込み、号泣します。
高校時代も決して順調だったわけではありません。進級に必要な出席日数はぎりぎりで、通学時には何度も送り迎えのサポートをしました。香苗さんはそんな日々を、「良くなりつつあると思えばドスンと落ちる。そんなことの繰り返しだった」と言います。
「ドスンと落ちるたびに、『ここまで頑張っているのに、どうして?』という思いが湧くんです。でも、人にとっては当たり前のことが、息子にとっては当たり前ではないんですよね」
「今もいろいろありますよ」と微笑みつつ、「でも、私にとっての子育てと家庭育ては息子の不登校から始まった。そう言えるようになりました」と話す香苗さんの表情は明るいです。


















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