あのぬくもりを、柔らかい手触りを忘れられず、ぼんやりとペットショップで犬や猫を眺める日々が続いていたある日――。
温かく柔らかい命の重みを感じて
「犬と猫を見たあと、ハムスターコーナーに寄ったんです。そしたら数匹のハムスターが入ったケージの隣に、一匹だけ別のケージに入れられた子がいて」
ハムスターより少し大きめで、真っ黒な毛色をした動物。遠くから見るとまっくろくろすけのようだが、よく見ると鼻の上が少しはげて、かさぶたになっている。木で作ったアーチの上にちょこんと座った姿が、ひどく寂しげに見えた。
吸い寄せられるように近づき、ガラスケースに指をあててみた。
「そしたら、すぐに近づいて来て指を追うようなしぐさを見せたんです。ハムスターの場合はたいてい、手を近づけると逃げてしまうので、人懐っこいな、かわいいなって」
ケージの下のタグには「デグー」とあった。一度店を出て検索してみると、「デグー」はハムスターと同じげっ歯類だが、コミュニケーション能力が高く、寿命も長いことがわかった。飼育下では、8~9年生きる個体もいるという。
「お迎えしたいなと思って、パートナーに相談しました。彼の不安は寿命が短いと別れがつらいことだったので、ある程度長く一緒にいられることがわかると、『それならいいんじゃない?』って言ってくれたんです」
彼の同意を得て再び店を訪れた。お迎えすることを前提として、その場で触らせてもらえることに。怖がらせないようゆっくりとガラスのケージに手を入れて差し出すと、デグーはすぐに近寄ってきた。怖がるどころか自らみきさんの手に体を摺り寄せて、ピヨピヨと甘えるような声で鳴いたのだ。
黒い綿毛のように柔らかく繊細な毛並みの奥に、生き物としての確かな体温を感じる。求めていた温かさだった。
「デグーって、仲間同士で毛づくろいをし合う習性があるのですが、私が撫でてあげたら、初対面なのに毛づくろいを返してくれたんです」


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら