西欧が支配する世界秩序が終わりを迎えている、新興国など世界が西欧に突きつけているのは戦争による終焉か、より平和的な体制移行だ(後編)
これに対し中国は、新たな人民元によるデジタル決済システム(CIPS=中国人民元国際決済システム)を導入し、ブロックチェーンシステムという分権的システムを導入することで、次第にSWIFTシステムの領域を侵食し始める。手数料が少なく、凍結の可能性がないこのシステムにアジア、アフリカの国々が参加し始めるのは当然であった。
こうして次第にドルが国際通貨としての揺るぎない地位を失い始めてきたのである。これは西側経済システムを破壊しかねない大きな衝撃である。
アメリカの軍事的優位の崩壊
アメリカは世界中に軍事基地をもつ、それはフランスやイギリスに関しても同じである。世界経済の支配にとって重要な海峡、運河、原料や燃料などを守るには、世界に軍事基地を置く必要があったからである。しかし、これは西側諸国の経済が強い限りにおいて成り立つもので、経済に陰りが見えてくると、軍事予算は重い負担となる。
世界最大の軍事大国アメリカの予算も、膨大な基地の維持のためにその多くが失われている。財政赤字が膨らむにつれて、軍事予算は緊縮せざるをえなくなる。その圧迫が武器の開発にも及んでくる。24年にロシアの新兵器が出現したときにアメリカが呆然としたのは、もはや軍事技術においてアメリカの優位がなくなったという現実を認識させられたからである。
ウクライナ戦争を見る限り、軍事作戦はITを使った高度で緻密なシステム戦略に代わっている。25年1月にバルト海、そして12月に沖縄で起こったレーダー照射事件では、中国とロシアの技術の驚くべき進化に驚嘆させられたはずである。
ベネズエラ、ナイジェリア、パナマ、黒海などでの軍事的緊張も、ロシアや中国をはじめとするBRICS諸国の軍事能力の高さで膠着状態が続いているというのが現状かもしれない。
しかも、世界の工場といわれる中国がIT戦略の要であるレアアースの生産を独占しているという事実がある。中国は、工業生産において世界の40パーセント近くを占めるとさえいわれる状況で、武器の生産能力の優位も失われているのである。


















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