西欧が支配する世界秩序が終わりを迎えている、新興国など世界が西欧に突きつけているのは戦争による終焉か、より平和的な体制移行だ(後編)
アメリカによる世界支配はアメリカを慢心させた。慢性的貿易赤字と財政赤字が、ドルを世界中に垂れ流すことで、アメリカは自らモノを作らずして世界一豊かな消費大国となった。それは工業大国から金融大国への移行であり、ある種の国家の老いの象徴でもあった。
その間、非西欧の新興国はアメリカのためのモノづくりという奴隷的労働に終始したのだが、それがかえって工業力を増大させ、貿易黒字と技術発展をもたらした。新興国は、アメリカに慢心というトロイの木馬を送ったことになる。アメリカがこの気持ちのよい優越感に浸った時、突然新興国はアメリカに襲いかかった。
新興国によるトロイの木馬がドル体制を壊した
新興国の中心はかつての共産圏、ロシアと中国であった。肉を切らせて骨を切る。自壊したかに見えた両国は、したたかに捲土重来のときを待っていたのかもしれない。
戦後世界の支配体系はIMFによる経済システムの支配体系であった。それはドルを基軸とした通貨を使うことで、ドルがなければ貿易ができないという縛りを世界に強制するシステムであった。29年の大恐慌前はイギリスのポンドが支配していたが、それは金とのリンクによって信頼づけられるはずのものであった。当然ドルも当初は金とのリンクによって基礎づけられていた。
しかし71年8月に金とのリンクが外れて以降、ドルは準備金なく自由に発行できる通貨となり、アメリカの財政赤字とともに、過剰発行リスクを背負うことになる。しかもドルが西側支配体制のための経済制裁にたびたび使われることで、アメリカへの不信がロシアと中国をはじめとする新興国で増大する。
アメリカのドル体制を支えるシステムとは、具体的にはアメリカによる決済システムであるSWIFT(国際銀行間金融通信協会)である。これは世界貿易の決済がアメリカの銀行ですべて決済されるシステムであり、そのため各国はアメリカにドルを預託する必要があった。この手数料は重く、凍結さらには没収される危険性があった。


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら