爆上がりする「日本の大学の授業料」がもたらす2つの不幸、"少子化と不平等"の悪化で社会全体が衰退に向かう…悪しき大学政策の根底にあるもの

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第1に、個人が置かれている立場が影響する。例えば、学生は公的な支援が必要だと考える度合いが強い。第2に、政治意識が影響する。すなわち、左派的な政治意識を持つ場合に公的な支援が必要だと考える傾向がある。第3に、当該の国の現状が個人の意識に影響している。現状において支援が少ない国ほど、支援が必要だと考える度合いは低い。

この第3の点をGarritzmannは「ポジティブ・フィードバック」と呼び、このメカニズムにより各国の大学の学費負担構造は維持される傾向があると結論している。

この「ポジティブ・フィードバック」、つまり現状を自明視し肯定しがちな人々の意識が、各国の政府が従来どおりの政策を取り続けることを容認しているという知見は、日本について考える際にきわめて示唆的である。

「受益者負担」の呪いが浸透している

平たく言いかえるならば、「教育を受けたいなら自分で金を払え」という、日本政府、より具体的には自民党が過去半世紀以上にわたって唱えてきた「受益者負担」の呪いが日本の人々には浸透しており、個人や家族の一生にとってきわめて重い負担となる高額の大学授業料が存続・悪化することを許してしまっているのである。

「受益者負担」という考え方は決して自明ではない。他の諸国、特にヨーロッパ大陸諸国では、大学教育は国家が費用を負担し、育成された人材は国家に貢献するという発想が強い。日本はその逆である。「受益者負担」は、金を払って大学教育を受けた個人が、国家への貢献など考えもせずエゴイスティックに私利を追求してよいという隠れたカリキュラムになっているのである。

こうして日本では、教育費用の負担の重さから少子化が進み、世帯や個人の費用負担力の多寡による教育の不平等が進行し、そして教育を受けた者は自己中心的にふるまいがちであるということによって、社会全体が衰退の方向に向かっている。

いつまでこの状況を続けるのか。あまりの事態に対して2020年から導入された給付型奨学金などの修学支援制度も、さまざまな制約や不十分さのために、もともとの構造を変えるにはいたっていない。大きく舵を切り構造を変えない限り、この社会とそこに生きる人々にとっての前途は非常に暗い。

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
本田 由紀 東京大学大学院教育学研究科教授

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ほんだ ゆき / Yuki Honda

1994年、東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。日本労働研究機構研究員、東京大学社会科学研究所助教授などを経て、2008年より現職。専門は教育社会学。教育・仕事・家族という3つの社会領域間の関係に関する実証研究を主として行う。著書に『「日本」ってどんな国?』(ちくまプリマ―新書)、『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)など。

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