爆上がりする「日本の大学の授業料」がもたらす2つの不幸、"少子化と不平等"の悪化で社会全体が衰退に向かう…悪しき大学政策の根底にあるもの

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それは結婚や出産の躊躇、すなわち少子化の遠因ともなり、また仮に労働条件の悪い職場であっても転職が難しい状況にもつながっている。

日本の大学費用負担構造の特徴とその背景

以上に見てきたように、近年の日本の高等教育の授業料値上げは、絡み合った大きな問題を生み出している。

こうした事態は、突然現れたわけではなく、日本政府が高等教育に対する公的な支出を非常に抑制してきたという長い歴史の果てに生じたものである。では、なぜ日本政府はそうした冷酷とも言える大学政策を長年にわたり続けることができたのか。

これに関して参考になるのが、政治社会学者Garritzmannによる、「大学生支援に対する世論」と題した論文である。Garritzmannは、まず以下のように世界各国の学費負担構造の散布図を示す。横軸は経済的支援を受けている大学生の割合、縦軸は国公立大学の授業料額である。

◎大学の学費負担構造の「4つの世界」

大学の学費負担構造の「4つの世界」
(出所)Garritzmann前掲論文、Figure1

※外部配信先では図表がうまく表示されない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください。

日本は左上の象限、すなわち経済的支援を受けている大学生の割合が低く、国公立大学の学費は高いという特徴をもつ特異な国であることが一目瞭然である。なお、この図はOECDの2010年のデータベースから作成されたものだが、どうやら日本政府はその後にOECDに対してこのデータを提供しておらず、近年は日本を含めた形で同じ図を作成することができなくなっている。

続いて、Garritzmannは各国共通の意識調査ISSPデータを用いて、学生に対する公的な経済的支援の必要性についての各国の結果を示している。この図においても、日本は0(支援が必要だと全く思わない)や1(あまり思わない)の回答の多さにおいてきわだっている。

◎大学生への経済的支援に対する各国の意識

大学生への経済的支援に対する各国の意識
出所:Garritzmann前掲論文、Figure2

※外部配信先では図表がうまく表示されない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください。

さらにGarritzmannは、個人レベルの要因および国レベルの要因を独立変数として投入し、大学生への経済的支援に対する各国の意識を従属変数とした多変量解析により、次の3つの知見を見い出している。

※ Garritzmann, J. L. (2015). Attitudes towards student support: How positive feedback-effects prevent change in the Four Worlds of Student Finance. Journal of European Social Policy, 25(2), 139-158.)

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