"ジブリ風"など…AI隆盛で「アニメ業界」に生じる混乱 絵だけでなく、声やグッズの権利をどう守っていくのか
そうしたAIとの「共存」を目指す取り組みの1つには、声優の梶裕貴さんが主導する音声AIプロジェクトもあります。無断で声を学習/生成されるAI音声に対し、「ガイドラインに守られた、本人公認の高品質ソフト」を用いてAI音声を提供しようとするこの試みは、00年代に動画プラットフォームでアニメの無断アップロードが横行した際の流れも彷彿させる動きです。
動画配信技術が普及し始めた当時は、無断アップロードされたアニメがプラットフォームに溢れていましたが、規約やガイドラインが生まれ、公式配信の体制が徐々に整えられていったことで、今では正規配信がメインストリームとなりました。
この時と同じく、今は急速なAI技術の発達と普及に対応が追いつかず、ガイドラインの制定やステークホルダーの権利を守りながらAI技術を生かす体制が整っていない状態といえます。
しかし10数年かけて、人々が正規の配信でアニメを視聴することが当たり前になっていったように、権利が不当に侵害されることなくAIを活用できる環境を整えていくこともできるはずです。
多くの問題や混乱を抱えながらも、現在アニメ業界がAI技術を全否定・排斥するのではなく共存の道を模索すべく動き始めているのは、そうした未来にたどり着くためでもあるのだと思います。
まさに過渡期の現在
近年はアニメグッズに関しても、既存キャラクターのAI製イラストをポスターにしたものを販売して書類送検される人がいたりするなど、AIの技術が悪用される事例が後を絶ちません。
一方で、AIソフトを補助的に用いながらアニメ映像のリマスターが行われるなど、AIに本来期待されている作業効率化や映像技術の進化が実現している事例も生まれてきています。
かつて動画配信プラットフォームが普及したときのように、急速に広がるAIの普及はもはや誰にも止めることはできません。そんな中で権利の侵害や悪用をいかに防ぎ、AI技術との共存の道を探していけるのか。アニメ業界はAIとの関係において、まさに今その過渡期にあるといえます。
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