豊田章男はなぜ顔の見える経営者になったか 「前に出る男」が体現するトヨタ創業家の本質

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

レギュラー番組を数多く抱えるマツコ・デラックスが出演するテレビ朝日系の人気番組「夜の巷を徘徊する」。今年10月1日に放送された3時間特番はマツコたっての希望ということで、愛知県豊田市にあるトヨタの工場を見学する企画だったが、これになんと豊田が登場した。

豊田は自ら、愛車である世界に500台しかないスーパーカー「レクサスLFA」でマツコをお出迎えし、さらには記念館でトヨタの歴史や創業者の苦労話を語り、工場内をエスコート。最後に、手作業のため、1日3台しか作れない水素を燃料とする燃料電池車「MIRAI」(ミライ)に、これまた豊田の運転で試乗するなど、至れり尽くせりでもてなした。

トヨタやレクサスの「シンボル」のように見える

豊田は自らが、まるでトヨタやレクサスのシンボルになって動いているように見える。一般消費者に限らず、販売店や取引先なども含めたトヨタグループ関係者に対するメッセージやブランディングにもなっているだろう。ただし、「顔が見える」という印象を形成しているのは、ポジティブな場面への露出だけではない。

トヨタ初の女性役員が逮捕された翌日、豊田はすぐに記者会見を開いた(撮影:今井 康一)

今年6月18日、トヨタ初の女性役員が麻薬密輸容疑で逮捕された翌19日夕方。豊田はすぐに記者会見を開き、迅速かつ真摯な対応で騒ぎを見事に鎮火させた。

自動車部品メーカー、タカタのエアバッグ問題でホンダが11月4日にタカタ製部品の採用中止を発表すると、直後の同6日に会見を開き、ホンダと同様の判断を表明して、即座に方向性を決めた。最近の豊田は、会社全体の方向性を左右しかねない出来事が起きたときの対応が速い。

自らが口を開いて著名人と一緒にメディアへ露出するにしても、不祥事やアクシデントなどに急いで対応するにしても、一つ振る舞いを間違えば、社内外問わず批判の対象になるリスクがある。にもかかわらず、豊田はそれを恐れず、トヨタを代表し、率先して前に出ている。

イチローが対談「#5 ピンチとチャンス」で豊田に投げかける質問がある。

イチロー「章男社長は『ピンチはチャンス』を体現している。ピンチのときにそこにズドーンと向かっていき、それが結果的に大きなチャンスになる。でもピンチはピンチなので、(普通は)なかなかいけない。あれはなんなんですか?」

次ページピンチをチャンスに変えるための一歩
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事