正論で論破する人は「真のリーダーになれない」 立場が上がっても藤田晋が守り続ける、人を動かすための"苦行"

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日本で累計500万部以上も売れている大ベストセラーなので、ご存知の人が多いと思うけど、こう書いてある。「相手にしゃべらせる」「聞き上手になる」「思いつかせる」。これが相手を説得するための原則だという。驚くことに、自分はほとんど喋らなくてもいいということだ。

面接でほとんど喋らない学生が

オセロで相手に思う存分取ってもらうのと同じで、いかに相手に気持ちよく喋ってもらうかに集中し、それに共感して頷いているだけでいい。最後は相手に結論を出してもらう。それからというもの、面白いように受注が取れるようになった。

自分が伝えたいことが言えず、相手に主導権を取られ、途中までは劣勢かと思いきや、終盤に鮮やかにひっくり返す。それはオセロのような感覚だった。

サイバーエージェントを創業して数年、本社がまだ渋谷マークシティにあった頃のこと。ガラス張りの会議室の前で人を待っていると、新卒の採用面接をしている男性社員の姿が目に入った。

何気なく眺めていると、面接だというのに、社員ばかりがずっと喋っている。身ぶり手ぶりを交え、熱心に学生に語っている。学生はほとんど喋らず、深く頷いたり、時折驚いたように相槌を打ったりしている。

そのまま一方的にうちの社員が喋り続け、面接を終え、学生をエレベーターまで送り、会議室に戻ってきて、私の存在に気づいた彼は、興奮した顔でこう言った。「今の学生、超優秀ですよ」。

お前がずっと喋っていただけじゃないか、そう喉まで出かかったけど、理由は分かっていた。面接官を気持ちよく喋らせた学生の方が一枚上手、という意味で確かに優秀なのだろう。

オセロもコツを知っている同士が対戦すると簡単にはいかない。序盤中盤は相手に取らせようと睨み合いが続き、上級者同士になると、さらに高次元での駆け引きが生まれる。

お取引先でも、例えば電通や博報堂の上層部の方の会食はもはや達人の域で、私が相手に気持ちよく話してもらうつもりだったのに、気がついたら私ばかり喋っていた、なんてこともある。このレベルになると、相手に気持ちよく喋ってもらおうなどというのは当然で、いかにその話題に持っていくか、下調べなど事前準備においても余念がない。

『人を動かす』には「相手の関心ごとを話題にする」と書かれているけど、その人のことを探偵の如く調べあげ、ちゃんと予習してくるのだ。最近だと、この文春の私の連載もしっかり読んで会食の場で話題にしてくる。それをやられると、私なんかはもう、気分がいいに決まっている。

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