アメリカ政府がエヌビディア製AI半導体の対中輸出許可へ。台頭する中国国産メーカーは勝てるのか? セキュリティーめぐり米中対立も

✎ 1〜 ✎ 1638 ✎ 1639 ✎ 1640 ✎ 1641
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
エヌビディアのAIチップ「H200」。中国政府が国内販売をどこまで認めるかはまだ不透明だが、中国の国産チップメーカーにとっては手ごわい存在になりそうだ(エヌビディアのウェブサイトより)

アメリカのトランプ大統領が、同国の半導体大手、エヌビディア(NVIDIA)のAI(人工知能)用半導体チップ、H200の中国向け販売を許可するとソーシャルメディア上で表明した。従来型より高性能のAIチップのアメリカからの供給が再開されることで、中国企業にどのような影響が出るのかを探った。

一つの焦点はH200のサイバーセキュリティー上の問題だ。アメリカの議会内からは輸出許可に異論も出る一方、中国内ではエヌビディア製チップからの情報漏洩などのリスクを問題視する声が出ている。

アメリカの上下両院の超党派議員は7月の段階で、先進AIチップの輸出に位置情報認証を義務付け、中国への密輸を防ぐ「チップセキュリティ法案」を提出している。アメリカの大手情報サービス会社ブルームバーグも、アメリカ政府当局がAIチップへの位置情報追跡装置の搭載を検討していると報じた。H20より進化したH200の対中輸出については、米議会などが一段と警戒感を強めそうだ。

これに対し、中国の国家インターネット情報弁公室はエヌビディア関係者を呼び、中国に販売されたH200より旧型にあたるH20チップの脆弱性とバックドア(外部から情報を抜き取ることができる「裏口」のような仕組み)によるセキュリティーリスクについての説明と関連資料の提出を求めた。

エヌビディア側は監視ソフトなど否定

エヌビディアはその後、自社のチップにはバックドアや、遠隔で機能を停止するキルスイッチ、監視ソフトウェアは含まれておらず、また含まれるべきではないと強調したが、通信事業者やクラウド事業者などの中国の需要家はエヌビディアのチップ購入を増やしていない。

もう一つの焦点は急速に台頭してきた中国の国産AIチップへの影響だ。AIチップ開発企業の中科寒武紀科技(カンブリコン)は2025年上半期の売上高が28億8100万元(約640億円)に達し、前年同期からの伸び率は43倍を超えた。一時的要因を除いた純利益は9億1300万元と初の黒字を達成するなど成長著しい。

次ページH200の実力
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事