日銀の本音を英語で伝える難しさ

札幌北洋ホールディングス相談役・高向巖氏②

たかむき・いわお 1938年生まれ、札幌北洋ホールディングス相談役。62年東京外大中国語科卒、日本銀行入行。香港事務所首席駐在員、広報課長、札幌支店長、情報サービス局長など歴任し、93年北洋銀行副頭取。2000年頭取就任。現在、札幌商工会議所会頭も務める。

日銀に広報課ができた1981年、香港駐在から東京に戻り、初代の広報課長を2年間務めました。それまで日銀は「行動すれども弁明せず」という英イングランド銀行の考え方を順守していました。一方で、世の中が変わり、金融政策を広く国民に説明する新しい中央銀行に変身する必要があるのではないかとの機運も生じていました。広報課設置に舵を切ったのが、当時の前川春雄総裁と三重野康理事です。

 前川総裁による日本人記者への会見に出た後、外国人記者には英語でブリーフィング(会見の内容と背景の説明)を行いました。そのとき感じたのが、日本語は極めてあいまいな言語だということです。

たとえば、総裁が円高に言及しても、水準として円高なのか、あるいは円高方向へ動いているという意味なのか、日本語でははっきりしないことがあります。しかし英語では、ごまかせない。日銀の本音を把握し、英語で伝えなければならなかった。ですから通訳という仕事はとても重要。訳し方次第で、国際関係が円滑になることもあれば、ギクシャクすることさえあります。

金融緩和の効果を実体経済に反映させるのは困難

三重野理事は広報担当の役員で、自分の部屋へ毎日必ず来るように言いました。日銀全体の状況や金融政策の方向などについて詳しく話をしてくれました。それまで私は海外畑で政策にはノータッチでしたから、外国人記者へのブリーフィングにとても役立ちました。

 記者クラブにいる日本人記者も広報課が役員に直結しているとの印象を抱き、尊重してくれました。離任時には記者の皆さんが送別会を開いてくれ、記念に万年筆をもらいました。それを今も大事にしています。

 現在の日銀は苦しい立場にあるでしょうね。「オールマイティ」であり、何でもできると見られている。インフレターゲットを設定すれば、すぐに実現できるだろうと期待されている。

でも、そんなことはない。金融引き締めはまだしも、緩和の効果を実体経済に反映させるのは容易ではありません。たとえば、たくさんの小遣いがあっても、使うかもしれませんが、使わないかもしれない。

「余計に小遣いをあげれば必ず使う」という前提で、多くの人が日銀に過大な要求をしているんでしょう。皆がおカネを使わずモノを買わないから、経済も回らない。足元はそうした状況です。あえて言うなら、できないということを日銀はしっかり説明したほうがいいと思います。

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