それでも、留美さんは前を向いて長女と三女を育て上げなければならない。子どもたちには「ママはもう結婚しないよ。あなたたちが自立したら一人で好きなことをして過ごす」と宣言。前からやりたかった介護職に就くこともできた。
人間関係の良好な職場でやりがいのある仕事に打ち込み、生活が安定すると、たいていの人には遊び心のような余裕が生まれる。「結婚生活はもうこりごり」と思っていた留美さんにも変化が生じた。
「長女が職業訓練校に入学できたことが大きかったです。今では仕事を見つけて一人暮らしをしています。本当に、よかったです……」
そんなとき、留美さんは職場の書類仕事でわからないことがあった。近くにいた勝彦さんに質問すると、慣れた様子でサラッと書いてくれた。
「この人が安藤さんなんだ、と3年前に同僚に紹介されたことを思い出しました。とてもいい感じで仕事も的確。興味がわいて、改めて友だちに飲み会をお願いしました」
酒癖も確認、飲み会でのお互いの印象は…?
この飲み会で、留美さんは勝彦さんの酒癖も確認した。前夫のように怒り出す飲み方では困る。実際、勝彦さんはハードリカーを愛する酒飲みだったが、酔うほど朗らかになり聞き上手にもなった。合格だ。
ちなみに留美さんも根っからの酒好き。記憶ではなく体が飛んで、朝起きたらアザだらけだったりもするとか。勝彦さんも好印象を持った。
「飲み会で楽しい人やなーと感じました。今までの婚活で知り合った人とはお互いに距離感を縮められずにいましたが、彼女は距離感ゼロ(笑)。仕事の話もできるし、その明るい人柄に触れられた気がしました」
勝彦さんはすぐに「好きです」と告白し交際を始めた。さらに、長きにわたる婚活で養った相場観も発揮する。
「この人を逃したら僕は一生結婚できないと思ったんです。だから、付き合っているだけの状態を長引かせるわけにはいかない。半年後にはプロポーズをしました」
勝彦さんとの交際中、留美さんにはさらに嬉しいことがあった。前夫の正雄さんと義父のもとで暮らしていた次女が「家を出たい。ママ、迎えに来て」と泣きながら電話をかけてきたのだ。正雄さんは1年前に再婚して子どもができ、次女の進学費用を渋り始めたという。



















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