《馬のお尻》愛し続けて30年…気づけば競馬記者に 「理想の名尻は筋肉がハート型」と語る彼女、偏愛高じて身についた"勝ち馬見立てる観察眼"
「厩舎のみなさんが努力して馬を育てると、どんどんお尻が大きくなっていくんですよ。お尻から後ろ脚の部分を競馬用語で“トモ”と呼ぶんですが、トモが立派であればあるほど踏ん張りが利き、スピードが出るんです。お尻が大きくなるのは速く走るための筋肉がついたという証しなので、最初からずっと注目はしていました。ただ、この頃はまだ自分で写真を撮るほどではなかったですね」
どちらかというと胸の筋肉のほうをよく見ていたそうだが、お尻を見つめる眼差しは、少しずつ熱を帯びていく。
競馬コラムに綴っていたのは尻、尻、尻のことばかり
2021年にスポーツ報知に転職すると、地方競馬でもトップレベルの馬たちが集う南関東4競馬場(浦和、船橋、大井、川崎)の担当になり、ほどなくして再び中央競馬の担当になった。志賀さんはそこで、自分がいつの間にか馬のお尻に並々ならぬ情熱をもっていたことに気づく。
中央競馬は原則として土・日曜、祝日にレースが開催される。そのため中央競馬の担当時は毎週、記者全員がそれぞれの見解で15行ほどの予想コラムを書いていた。「人に言われてわかったのですが、どうもそのコラムにお尻のことばっかり書いてたみたい」と志賀さん。
「競馬新聞って、ひとつ前のレースの予想を当てた人が、その週におこなわれるレースの一面記事を担当することになるんです。たとえば4月の皐月賞を当てた人が、6月の日本ダービーの一面を担当するような感じで。その一面記事でも、私はお尻の状態から本名馬を予想してコメントを書いてたようなんです」
自分でレースの写真を撮る機会が増え、取材をするときも自分で撮影した。思い出しながら「ちょっと気持ち悪いですよね」と苦笑するほど、カメラで追っていたのは馬のお尻ばかり。いかにかっこよく撮影できるかを考え、豊かな筋肉の隆起やその周辺の艶やかな光沢が引き立って見える時間帯を狙った。角度にもこだわり、何度も場所を変えながら撮影の位置取りをするようになった。
撮影だけではない。調教終了後、記者仲間と馬の様子や状態について意見を交わすときにも「お尻が大きくなって足の繰り出しが力強くなったよね」と、主にお尻について話すようになっていた。
志賀さんは成長の証しとして馬のお尻に注目し続けているうちに、いつの間にか推進力を生み出す筋肉の発達の奥深さや美しさに魅了されていたのだ。
記事の編集を統括するデスクは、その特異な視点を見逃さなかった。
「競馬の最高峰に位置するG1レースがあるたびに、“お尻探偵”に扮してコラムを書くことになったんです。“そんなに馬のお尻が好きなんだったら、いっそのことG1の予想をさせてやるか”と考えてくれたデスクがすごいなと思います。そうじゃなかったら、私はただの変態で終わるところですから」
お尻探偵として書いたコラムとはどのようなものだったのだろうか。2022年のコラムを見てみよう。



















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