ただしこれもおかしな話で、本来、連邦政府の資金を支出できるのは議会だけである。三権分立という仕組みの根幹は、大統領の権限をチェックするために、「予算は議会、法解釈は司法に委ねる」という相互チェック体制にある。
ところがトランプ関税においては、大統領が単独で歳入を得られてしまう。しかも「ブラジルは50%」などと、大統領が国別の税率まで恣意的に決めてしまう。やはり「相互関税」は法律的に無理があるのではないだろうか。
もし違法になっても、日本は「対米投資」を実行か
次なる問題として、仮に相互関税が違法となった場合、日米が合意した5500億ドルの「対米投資イニシアティブ」はどうなるのだろう。本来、関税を下げてもらうために合意したものであるから、破棄されるのが本筋ではないかと思う。
とはいえ、そこは日本政府のことである。既に対米投資の肝いり役となる2つの政府系金融機関、JBIC(国際協力銀行)とNEXI(日本貿易保険)は、増資に向けて動き始めていると聞く。ひょっとしたらトランプ関税がなくなって、日本企業には返還金がもたらされるかもしれないが、「ウチは対米投資はキチンとやりまっせ」、てなことになるのかもしれない。
ともあれトランプ政権としては、「関税のお陰で、EUや韓国からもこれだけの好条件を得たんだぞ」などとアピールしている。ただし最近はバナナやコーヒー豆など、アメリカ国内で作っていない産品の関税をゼロにするなど、少しずつ軌道修正を図っているようでもある。ひとつには関税による物価上昇に対して、国民の不満が高まっていることもある。
それでは最後に、判決が出るのはいつ頃なのか。米最高裁の会期は毎年10月から6月末までである。ゆえにいちばん遅ければ来年6月下旬ということになる。ただし今回の日程から言えば、年末くらいに出ても不思議ではないだろう。ともあれ三権分立による相互チェック体制は、今日も正常に機能しているのではないだろうか。
来年は11月3日に中間選挙も行われる。トランプ第2期政権としても、今までのような「やりたい放題」は難しくなるだろう。10月までと11月以降を比較すると、アメリカ国内の雰囲気が変わり始めた。いきなり氷河期が来たわけではないけれども、秋風を感じる季節になったというのが現下のワシントンの雰囲気であるらしい(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。



















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