さらにその翌日、米最高裁において「トランプ関税」の是非を問う最初の口頭弁論が行われた。もともと関税によって被害を受けた企業や一部の州が、トランプ関税は違法であると連邦政府を訴えていたものだ。
5月にはニューヨークの米国際貿易裁判所が政府側敗訴の判決を下し、8月にはワシントンにおける控訴審でも1審を支持する判決が出た。トランプ政権は慌てて最高裁へ上告していたものである。当日は3時間にわたって審理が行われたが、政府側に対して最高裁判事たちが厳しい質問を行ったことで注目を浴びた。
ご存じの通り、アメリカ最高裁には9人の判事がいる。現在の判事は保守派が6人でリベラル派が3人。しかも保守派判事のうち3人は、トランプ大統領が第1期政権の時に指名した人たちだ。普通に考えれば、政権側に有利な判決が出そうに思える。
一例を挙げれば、英国『エコノミスト』誌が10月2日付で面白い記事を載せていた 。9人の判事が過去に書いた判決文を全てAIに読み込ませて、それぞれの判事の考え方を学習させた。その上でAIによる9人の「ヴァーチャル判事」たちに、トランプ関税について議論をさせてみたところ、10回中9回は政府側が勝つ判決が出たという。AIにはこんな使い方もある、という面白い事例だったのではないかと思う。
改めて「IEEPA」(国際緊急権限法)とは?
今回の裁判で争われているのは、トランプ関税のうち「相互関税」と「フェンタニル関税」の2種類である。いずれもIEEPA(アイ―パ、国際緊急経済権限法)という法律が根拠になっている。それ以外、自動車関税や鉄鋼・アルミ関税などの「分野別関税」は、通商拡大法232条というこの世界ではおなじみの法律に基づいていて、これらは訴訟対象とはなっていない。仮にIEEPA関税が違法判決を受けたとしても、日本からの自動車関税などは今のまま残ることになる。
それでは「IEEPA」とは、そもそもどういう法律なのか。「大統領が緊急事態を宣言したときは、特別な経済措置を採ることができる」ことを定めたもので、例えばアメリカがイランやベネズエラに対して経済制裁を行った際には、この法律が根拠となっている。オバマ政権も使っているので、けっして共和党政権の専売特許というわけではない。



















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