急に寒風が吹き始めたトランプ政権、もし頼りにしている「保守派最高裁」が「相互関税」に違憲判決を下したら、その後には何が待っているのか

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今年2月に導入された「フェンタニル関税」では、フェンタニルという合成麻薬が国境を越えてアメリカに流入し、年間数万人の死者をもたらしていることを緊急事態として認定した。ゆえにフェンタニルの製造元といわれている中国、そして国境を接するカナダとメキシコの3カ国を相手に、トランプ政権が関税をかけている。

また4月に導入された「相互関税」では、アメリカの貿易赤字が2024年に年間1.2兆ドルを超えたことを非常事態であると認定した。そのうえで、すべての国に対して10%、貿易赤字の額が特に多い国に対しては追加関税を課すことになっている。ここはいくつかツッコミどころがあるはずで、「そもそも貿易赤字って国家の非常事態なのか?」「外国製品を買えるのは結構なことじゃないのか」など、論点がいくつも出てくるところである。

最高裁長官までも「法律が曖昧な行政措置」には懐疑的

さて、11月5日の公判においては、政府を代表してジョン・サウアー司法長官代理が出廷した。これに対し、最高裁判事たちから相次いで厳しい質問が飛び、政府側はたびたび苦しい答弁を余儀なくされた。

リベラル派の3人の判事からは、「議会がIEEPAという法律を作ったのは、貿易に関する大統領の権限を制限するためだ」との指摘があった。三権分立の本来の趣旨からいえば、まったくその通りである。「この法律には、関税に関する言及がない」という指摘もあった。IEEPAは輸入を制限する措置は認めているけれども、関税をかけていいとは書かれていない。そもそも合衆国憲法は、関税を決めるのは議会の権限だと定めている。

 保守派の判事たちのうち、3人の判事からは「どうやったらトランプ関税を守れるか」とばかりに、現政権を擁護するような苦心の質問が相次いだ。ところが残る3人は、懐疑的な姿勢を示したのである。

特に最高裁長官であるジョン・ロバーツは、「司法としては、法律があいまいな行政措置を承認したくはない」と述べている。これは「重要問題法理」(Major Questions Doctrine)と呼ばれるもので、重大な政策を実施する際にはちゃんとした法律の裏付けが必要だという原則を示すものである。IEEPAという法律はそこが怪しいよね、と言うのである。

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