ラトビアが「欧州の戦略拠点」と呼ばれる理由。ユニコーン輩出より強力な"テストベッド"戦略

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2. EU基準という「信頼の証」

デジタルヘルス企業Longenesisのエミルス・シュンジュコフスCEOはこう言う。ラトビアは小国だが、EU加盟国だ。適用される規制(GDPRなど)はドイツやフランスとまったく同じ、世界最高水準。つまり、ラトビアで事業実績を作れば、「EUの厳格な基準をクリアした」というグローバル市場での「信頼の証」になる。

地理的にも欧州主要都市への玄関口だ。リガ市からクルマで15分のリガ国際空港から、ベルリンまで飛行機で2時間、ロンドンまで3時間。欧州主要都市へのアクセスも良い。

日本企業にとって、ラトビアは4億5000万人のEU市場への入り口だ。

ラトビア
ラトビアには日本の大手企業も進出している(筆者撮影)
3. 政府による「オールイン」の支援

ラトビア政府のスタートアップ支援は、国策レベルだ。2018年に導入した「スタートアップ法」で、破格の支援策を整えた。海外企業も使える。

政府は従業員の給与を最大45%共同出資し、スタートアップ向けに所得税をゼロにする特別税制まで用意した。

海外起業家向けの「スタートアップビザ」は、1つのアイデアに対し最大5人の共同創業者が家族ごと申請できる。日本から欧州進出を狙う企業も対象だ。企業が海外の展示会に出る際は、LIAAがブース費用と航空券代の60%を出す。

ザルベ=ソログバ氏の言葉が印象的だ。「私たちにはお金がある。どうかイノベーションを起こすためにお金を使ってください、とお願いしている」。

結論:日本が学ぶべき「エコシステム戦略」

ラトビアの強みは、ユニコーン企業の「数」という過去の実績ではない。国が「テストベッド」戦略を明確に打ち出し、手厚い資金援助とデジタルインフラを整える。政府サービスの91%がデジタル化され、行政手続きも効率化した。そして、Printfulのような成功企業がNPOを通じて次世代に還元し、官民一体の「成功の循環」が回る。

この「機能的なエコシステム」そのものが、ラトビアの最大のプロダクトだ。日本の地方都市や特区がグローバル競争力を獲得するうえで、大きなヒントになる。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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