ラトビアが「欧州の戦略拠点」と呼ばれる理由。ユニコーン輩出より強力な"テストベッド"戦略

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同社は自らを「テクノロジーカンパニー」と呼ぶ。原点は創業者の実体験だった。2013年、アメリカで別事業を立ち上げた際、プロモーション用に「ポスターを1枚だけ」印刷してくれる業者が見つからなかった。

Tシャツや水着、縫製まで1枚からオンデマンドで製作する(筆者撮影)

この課題をITで解決した。誰もが在庫リスクゼロでオリジナル製品を作れるPODの仕組みだ。顧客(オンラインストア運営者)はデザインとマーケティングに専念できる。製造から梱包、発送はすべてPrintfulが裏方で回す。

2024年11月、Printfulは大きな手を打った。同じラトビア発の競合「Printify(プリンティファイ)」との統合だ。リガ郊外の自社工場(6000平方メートル)やメキシコの巨大工場(2棟合計2万平方メートル)など、自社製造網を持つPrintfulと、85以上の外部パートナーネットワークを抱えるPrintify。両者が手を組み、新たなアンブレラブランド「FYUL」の下で事業を展開する。自社製造と外部委託、両輪を手に入れ、ラトビアの頭脳から世界市場を狙う体制が整った。

リガ郊外の自社工場にはグローバルの本社機能が集約されている(筆者撮影)

Case 2:成功者が次を育てる循環

Printfulの成功は、そこで止まらなかった。Printifyの共同創業者ジェームズ・バリガンは、自らの成功体験と資金を次世代に注いだ。NPO「Startup House Riga」を立ち上げたのだ。

Startup House Riga
リガ旧市街に位置するStartup House Rigaの建物(筆者撮影)

起業時、「壁にぶつかったときに相談できる場所がなかった」。この苦い経験から、バリガンは私財を投じ、創業者同士が支え合えるコミュニティハブを作った。ここで得た利益は、すべてエコシステムに戻す仕組みだ。

Startup House Rigaのクリスティアンス・イェンシウスCEOは言う。「エストニアにはSkype、リトアニアにはNordVPNという早期の大成功があった。ラトビアにはそれがなかった。だからこそ、創業者同士で支え合うコミュニティが他の国より強く育った」。小さい国だからこそ、個人よりコミュニティで勝負する戦略を選んだ。

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