ただ、がんの終末期や老衰、介護環境を整えながらの肺炎などは、病院でできることなら在宅診療でほとんどが対応可能です。
救急車でたらい回しされたり、病院で夜間のバイトドクターにみられるよりは、普段みてもらっている在宅診療所の夜勤医師にみてもらうほうが、よっぽどしっかりとした対応ができるはずです。
そして、息を引き取った後に救急車を呼ぶことだけは絶対にしてはいけません。
在宅診療をしていると、年間数例は亡くなった後に救急車を「呼んでしまった」という事例が出てきます。救急車が着いたあとに医師が追いかけて「死亡診断書を書きます」と話しても、救急隊と同席した警察官が「一度警察署に連れていきます」という判断をします。
そして数時間後、状況によっては翌日に、霊安室で寂しく置かれているカチンコチンの状態のご遺体を、ご家族と医師が引き取りに伺わなくてはなりません。
誰もが最期の時間を迎えます。
在宅での医療や看護、介護のサポートがあれば、苦しさを感じることなく、そして介護負担を感じることなく、穏やかに最期を迎えることはできます。
人生に一度の大切な瞬間を、焦ることなく、救急車を呼ばずに、ご家族との時間を過ごしながら、落ち着いて主治医を呼んでください。そして、亡くなったことを確認してもらい、死亡診断書を書いてもらいます。
最期の時間には、救急車も警察の介入も不要です。
看取り前の「ゴールデンタイム」
私はよくゴールデンタイムという言葉を使います。がんや難病の終末期でありながら、痛みや苦痛がしっかりと緩和されている時期のことです。
がんや難病の終末期において、多くの病院では「緩和」ではなく「治療」が選択されます。
たしかに最期が近くても「治る」病気はあります。たとえば、誤嚥性肺炎などの感染症や褥瘡(床ずれ)などの皮膚症状、骨折などの整形病変などは、医療や看護がしっかりと対応することで「治る」ことも可能です。
ただ、終末期のがんに限らず、人が一生のうちにかかる病気は、多くの場合「完全に治る」ことなど望めません。



















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