「不登校35万人超」過去最多、調査結果に表れない「出席扱いの子」の実態は把握できているか? 「"学びの多様化学校"の設置だけでは限界」の訳

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高尾山学園では、この個票システムに加え、転入時から不登校に至った経緯や学校での対応、保護者の思いを把握するだけでなく、日々変化する児童生徒の情報を全教職員がアンテナ高く捉え、毎日の職員朝会で細かく情報交換している。

さらに週に1回は、スクールソーシャルワーカーや心理士なども加わり学校全体で“気になる子”の情報を共有。開校以来続くこの体制は、不適応や不適切な対応が発生しにくい仕組みであると考える。

「複層的な支援」で成果を上げている東京都

文科省では不登校対策として、校内外の教育支援センターや学びの多様化学校などによる複層的な支援を推進している。「学校には行けるが、教室に入れない」「勉強はしたいが、学校に通えない」など不登校の状況は十人十色だからだ。

この点で、東京都の対応は複層的な支援により成果を上げていると考えられる。今回の文科省の調査結果では、都の不登校児童生徒数は小学校で高止まり、中学校では減少に転じている。

その理由として、学びの多様化学校の設置校数がほかの道府県に比べて多いことが考えられる。2025年4月1日現在、都内の学びの多様化学校は、高尾山学園を含め公立私立併せて本校型4校、分教室型8校、通信制高校コース1校の計13校で、2026年度も設置が予定されている。

さらに、中学校内で学びの多様化学校と同様の取り組みを行うため、14校に正規教員を加配して「チャレンジクラス(不登校対応校内分教室)」を設置。校内教育支援センターも全校で設置や設置準備が進んでおり、支援員やスクールソーシャルワーカー、心理相談員、巡回の教員なども配置し、児童生徒に手厚く対応している。

その中でも八王子市が優れているのは、高尾山学園という本校型の学びの多様化学校を設置しているだけではなく、同校舎内に適応指導教室(やまゆり教室)を設置して連携し、児童生徒が自信を持って転入(学校復帰)できるよう支援している点だ。転入後もプレイルームや相談室、保健室などを通じて多くの大人が関わり、不適応が再発しない工夫がされている。

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