「不登校35万人超」過去最多、調査結果に表れない「出席扱いの子」の実態は把握できているか? 「"学びの多様化学校"の設置だけでは限界」の訳

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一方で、不登校児童生徒数の陰に隠れた実態に注意する必要があると考える。さまざまな対策により、不登校としてはカウントされない児童生徒が存在するからである。

例えば、教室には入れないけれど、校内教育支援センターなら登校できる児童生徒。“校内”にある教育支援センターは、利用すればたとえ短時間でも出席扱いとなるため不登校としてカウントされない。

また、校内教育支援センターの多くが教室復帰を目指し、オンライン学習や自学自習を基本とした指導がされているが、“居場所”としての機能もあるため、通常の授業参加に比べると学力が身に付くかという点で懸念がある。校内教育支援センターなどの利用でも出席とすることが、より深い不登校状況を回避する意義は大きいものの、その陰に“学びに向かわない状況”が隠れていることを理解すべきである。

もう1つ、「心因性の不調」「朝が弱い」「昼夜逆転」などによって安定した登校ができないケースも、多くは遅刻扱いや病気欠席扱いとなるため不登校にはカウントされない。こうした児童生徒は遅刻等が続き教室に入りづらくなった結果、別室や保健室、相談室、校内教育センターなどを利用することになり、学びに向かわない状況になっている。

これらを踏まえ、不登校の集計結果の増減だけにとらわれず、その「学びの実態」を把握して丁寧に対応していく必要がある。

ICTも活用して全教職員で「実態把握」を

重要なのは、できるだけリアルタイムで不登校の児童生徒を把握することだ。また“不登校状態”は信号でいえば赤信号であり、黄色信号を把握して先手を打つためにも、校務支援システムなどのICTを活用して児童生徒の実態をしっかりと把握したい。

先手を打つためには、欠席が増えて年間で30日に至る前に、学期ごと、月ごと、週ごと、日ごとで、欠席の状態を把握し、登校渋りや遅刻などの状況や理由、背景などの情報も日々得て、全教職員で情報共有することが必要だ。

筆者がいた八王子市では、全小中学校で月3日以上欠席している児童生徒をリストアップし、市教委へExcelデータで毎月送付する「個票システム」と称する体制を組み、1人ひとりの欠席・遅刻の理由や状況、専門機関とのつながりや学校の対応などを把握している。

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