大ピンチ「紀州鉄道」2026年中に廃線の可能性も 中国系企業に買収され方針変更、値上げもできず

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「正式な金額は言えませんが、事業譲渡金の話もまとまりました。鉄道事業を引き継ぐ企業を探す時間をもうしばらく取っていただけることになりました」

大きな山場を超えたという感じだが、大串部長は顔を引き締めて言葉を続けた。

「ただ『引き継ぐ企業が見つかるまでの間の運行費用を削減するために列車の本数を減らしてほしい』と。利用される方には申し訳ないのですが、今後、運行本数を減らす方向で各所と調整を行う予定です」

削減の対象となる列車は、乗車人数の少ない昼間の時間帯を考えているという。

「とりあえず、猶予はできましたが、鉄道事業を引き継いでくれる相手が見つからなければ廃止となってしまうことに変わりはありません。ですが事業譲渡金の話もまとまったので話が進めやすくなりました。今後は、地元企業をはじめ、関西の企業、全国の企業に声をかけて行きます。また、鉄道事業に興味のある企業様には手を挙げて頂きたいと切に願う次第です」

鉄道事業の買収に手を挙げる企業はあるか?

紀州鉄道は老朽化すると脱線事故の要因となる木製枕木から、コンクリート製の枕木に置き換える工事が9割ほどの区間で完了しており、残るは300mのみ。これが完了したら軌間拡大の脱線事故が皆無になりより一層安全を担保に運行することができる。

JRと線路がつながっておらず、ポイントレールも本線から車両を留め置くための引き込み線に分岐するために設置されたもの2つしかない。トンネルもなく、全線で2.7kmしかないといった鉄道のため、ほかの鉄道会社と比べて運行費用や施設の維持費用が安い。競走馬を所有するような富裕層の個人であれば所有することも可能な金額だ(所有するためには国土交通省のハードルの高い審査が必要となると思われるが)。

「地域に愛されているミニ鉄道、経営規模が小さい路線ということを最大限にアピールして、現在年間約5000万円前後の赤字を半分近くにまで削減できるよう鉄道事業部の方で動いております。もちろん地元の方々や行政の協力も必要となりますが、御坊と西御坊を結ぶ2.7kmのミニ鉄道をなんとしても存続するよう動きます。売りは『日本一短いローカル私鉄』です。国内の資金力のある企業様への譲渡に最後の望みを託します」

取材後「記事ページに使うため、大串部長の写真を撮らせていただきたい」と頼んだが「すみません。今の時点では100%の笑顔が作れませんから。存続の道筋がつけられたら、写真を撮ってください」と断られた。が、その表情は12日前に見ることができなかった柔らかいものだった。

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渡辺 雅史 時刻表探検家

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わたなべ まさし / Masashi Watanabe

1975年生まれ。フリーライターとして、週刊誌や月刊誌で記事を執筆するほか、テレビやラジオ番組の構成にも携わる。2009年、国内の鉄道に完乗。時刻表の誌面に載っている"変な列車"や"味のある列車"を探すことをライフワークとしている。

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