大ピンチ「紀州鉄道」2026年中に廃線の可能性も 中国系企業に買収され方針変更、値上げもできず

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赤字ローカル線が地元に支援を求めるというのはよくある話。だが、支援の話になる前にやることがある。それは鉄道事業者による経営努力だ。紀州鉄道の運賃は1kmまでが120円、2kmまでが150円、それ以上が180円と首都圏や関西圏の地下鉄より安い水準だ。運賃の値上げをして増収を図り、それでも赤字なら支援を求めるというのが筋なのではないか。その旨をぶつけると、大串氏は申し訳なさそうに答えた。

「おっしゃる通り、運賃の値上げはやるべきことだと思います。ですが、運賃を値上げすることができないのです」

値上げできない「意外な理由」

赤字なのに値上げをできないとはどういうことなのか。

「鉄道事業者は運賃を値上げする際、国土交通省に申請をしなければなりません。そのためには値上げせざるを得ない事情などを細かく記した申請書を提出する必要があります。これを書くためには専門的な知識や経験が必要なのですが、申請書を作ることができるスタッフが長年不在でして……」

昭和の時代に不動産会社と合併後、業務効率化のため、東京本社のスタッフが鉄道事業の申請書を担当するようになった。だが、申請書を書くことができるスタッフが25年ほど前に退社。以降、値上げ申請ができず、現在に至るという。

「消費税が8%、10%と増税されたときも、申請書を作ることができず値上げすることができませんでした。規模の小さな鉄道会社なので値上げしなくても大きな赤字にならなかったことから、申請書を書くことができるスタッフを採用して運賃を値上げするということを行ってきませんでした。コロナ前の時期、さすがにそれを放置するのはよくないということで、当時東京本社にいた鉄道部長が運賃値上げにチャレンジしたのですが、莫大な資料や値上げの根拠などの提出を求められて値上げすることを断念したという経緯もありまして……」

鉄道事業は鉄道事業法などの鉄道に関する法律に基づき、国土交通大臣の許可を得て行うことができるもの。一般的な事業と比べて値上げするのも大変な労力が必要となるのだが、紀州鉄道で鉄道部門のスタッフは乗務員、駅係員を含めてわずか7人。大串部長も運転業務を行うなどほぼ限界の人数で運行に当たっている。スタッフが他社で申請書の書き方を学ぶために出向してしまうと、運行に支障が出る。

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