衝撃の中国映画『盲山』が暴く、農村女性の「教育を受けられない」現実 《都市と地方で教育格差が広がる》 一人っ子政策の残影も…
中国には都市戸籍と農村戸籍がある。詳細は前記事の通りだが、全人口に占める都市戸籍の割合は約45%、農村戸籍の割合は約55%とほぼ半々。農村戸籍は仕事、進学、結婚など人生のあらゆる面で都市戸籍の人よりも不利な立場に置かれている。
農村戸籍を脱して都市戸籍を手に入れるには、都市の大学に進学し、都市戸籍を取得できる職業に就いたり、何らかの方法で都市戸籍を取得したりするしかない。しかし、都市の大学に進学するには、農村戸籍の人は都市戸籍の人以上に高得点を取らなければならず、ハードルが高い。
「男児選好」が生んだ女性を苦しめる教育環境の厳しさ
農村の人々が貧困から抜け出せない問題点として、ほかには教育環境もある。日本同様、小中学校は義務教育だが、働き手がいないため、学校に通わずに労働させられる子どもが多い。政府の統計によると、23年の小学校の就学率は男女ともに99.9%となっているが、実際には途中から通わなくなってしまうケースがある。
地方(農村部)の財政事情も悪いため、有能な教師があまり配置されず、教材もあまり充実していない。そのため、高校に進学するハードルは高い。あまり教育を受けていない場合、家業を手伝うか、肉体労働をする「出稼ぎ」をするという方法しかない。
両親が出稼ぎに出た家庭には祖父母と子どもだけが残されるが、その子ども(中国で留守児童と呼ばれる)は精神的に不安定になったり、不登校になったりするケースが比較的多いと言われている。
中でも女性は男性よりもさらに厳しい環境に置かれている。背景にあるのは、中国が1979年から2016年まで37年間続けてきた一人っ子政策だ。子どもを1人しか持てないため、跡継ぎである男児を望む人が多く、農村ではとくにその傾向が高い。その結果、男女比がアンバランスになった。
政府のデータによると、中国全体の男女比は、男性51.24、女性48.76で男性のほうがやや多く、女性100に対し男性は105と男性余りだ。出稼ぎ労働者が多い広東省は113、内陸部の雲南省は107とさらに男性のほうが余っている。そのため、農村では深刻な嫁不足という問題が起きている。


















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