衝撃の中国映画『盲山』が暴く、農村女性の「教育を受けられない」現実 《都市と地方で教育格差が広がる》 一人っ子政策の残影も…

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中国政府の検閲により20カ所のシーンがカットされたが、最終的に中国国内での上映は禁止になった。日本では当初、7月に都内の映画館で1週間だけ公開されたが、反響が非常に大きく、10月中旬現在(執筆時点)も上映が続くロングランヒットとなった。

前評判は聞いていたものの、その内容はあまりにも衝撃的だった。就職が決まらず焦っていた女子大学生が「仕事を紹介する」という甘い言葉につられて、業者に誘われるまま山奥の農村を訪れる。そこで、寝ている間に身分証明書や荷物など所持品をすべて奪われて、農家に人身売買され、見ず知らずの40代の男性の花嫁にさせられてしまう。

女性は必死で抵抗し何度も脱走を試みるが、村民は全員グルで、何年も逃げ出すことができず絶望する。さらに、その農村の花嫁は全員同じような境遇だった……という内容だ。フィクションだがリアリティがあり、政府の検閲が厳しかったことからも、この映画がノンフィクションに近いものだと想像できる。

貧困と戸籍制度がつくり出す、都市と農村の「進学格差」

映画の製作から15年以上が経過しているので、現在は変わってきていると思うが、この映画から見えてきた中国社会の問題点はいくつかある。痛感させられるのは、農村の圧倒的な貧困だ。

中国国家統計局によると、2020年の時点で中国の都市や町の平均年収は農村の平均年収の3倍近い。しかし、農村によってはもっと大きな格差があるのではないかと考えられる。

それは公的データにはほとんど表れてこないためわからないが、あまりにも貧しいがために教育を受けられず、そこから抜け出すことができない人たちがいる。貧困や格差の根底にあるものは、以前の記事で紹介したように、戸籍制度の存在が最も大きい。

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