70年後に更地、それでも売れる―「定借マンション」人気の裏側。好立地でも手が届く「期限つき」という選択、メリットとデメリットを解説

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2024年の10月から契約を開始した、「リビオシティ文京小石川」(総戸数522戸、地主は共同印刷、約70年の定期借地権)の事例を見ていこう。

取材時点で、278戸が成約していた。契約した人の年齢は、30~34歳が27%、35~39歳が21%と30代が半数近くを占める。若い世代が多いような気もするが、売主の1社である日鉄興和不動産によると、通常の分譲マンションを購入する層とあまり違いはないという。

この物件を購入した決め手については、住環境の良い文京区の大規模マンションであることで、立地と規模の2点の評価が大きいという。定借マンションだから割安といった点だけを評価しているわけではないようだ。

逆に、期限が来たら取り壊すことへの不安はないか聞くと、不安を感じた人は資料請求に至っていないかもしれないが、見学に来ている人は定借マンションについて理解している。むしろ、70年後に建て替えでもめるより、どうするか決まっている方が良いという声もあったという。

イニシャル・ランニングコストにも注意

定借マンションでは、土地が所有権の一般的なマンションにはないコストが発生する点にも注意したい。ランニングコストとして、毎月、地代や解体準備積立金などがかかることは、事例でも紹介した。加えて、イニシャルコストで、土地を借りるための権利金や前払い賃料、保証金(退去時に返還される)などの名目で費用がかかることがある。

また、毎年納税する固定資産税・都市計画税については、土地は借地なので建物分についてのみ納めればよい。こうしたさまざまな違いがあるので、個別にしっかり確認しておきたい。

なお、定借マンションは売買できる。ただし、定借の仲介市場はまだ不透明な面がある。たとえば、残存期間が減るにつれて利用価値が下がるので、売却のしやすさや資産価値に影響してくる。一方、希少立地が評価されて資産価値が維持される場合もある。

したがって、定借マンションについては、定期借地権の種類や借地期間、トータルコストなど細かい点までしっかり確認したうえで、投資的な観点よりも、長期的な自分のライフスタイルに合うかどうかを検討するとよいだろう。

山本 久美子 住宅ジャーナリスト

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やまもと くみこ / Kumiko Yamamoto

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「All About(最新住宅キーワードガイド)」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を有す。

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