70年後に更地、それでも売れる―「定借マンション」人気の裏側。好立地でも手が届く「期限つき」という選択、メリットとデメリットを解説
これまで定借マンションの供給戸数はそれほど多くはなかった。
(公財)日本住宅総合センターの「定期借地権事例調査(2024年度)」を見ると、定期借地権付き分譲マンションは、創設以降バブル崩壊もあって徐々に増え、銀座タワー販売前後でピークを迎えたが、その後は減少の一途をたどり、近年になって増加傾向が続いている。

また、不動産経済研究所の「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年上半期(1~6月)」によると、首都圏における「定借物件の供給は634 戸と大幅増(前年同期168 戸)。年間では1,500戸を超える可能性も」と、大幅供給増であると分析している。2025年の首都圏の年間供給戸数の予測が2.3万戸なので、定借物件の市場に与える影響が大きくなると言えるだろう。
渋谷区笹塚に約70年の定借マンション
今年に入って見学した、定借マンションの事例を紹介しよう。
まず、「パークタワー渋谷笹塚」(総戸数659戸)。京王線・京王新線「笹塚」駅徒歩4分、地上28階建てのタワーマンションで、売主は三井不動産レジデンシャル。
土地は「新宿中村屋」の本社と工場があった敷地で、2098年までの約70年間の定期借地権。約70年というのは、物件の引き渡し予定日2028年3月下旬から2098年12月31日までのことで、期間満了時には更地にして返還する。

解体するからといって、マンションの共用施設が少ないわけではない。ラウンジやパーティールーム、ゲストルーム、個室のソロフィットネススタジオ(5室を予定)などがそろい、コンシェルジュが付く。また、地主である新宿中村屋の本社が2階に入る。
所有権のマンションと同様に毎月管理費や修繕積立金がかかるが、加えて、定借ならではの地代(土地の賃料)と解体準備積立金が、ランニングコストとしてかかる。
物件個別の特徴としては「笹塚駅南口地区まちづくり構想」のC街区に当たり、メルクマール京王笹塚のあるA街区、これから開発されるB街区と合わせて、まちづくりがさらに活性化していくことになっている。また、周辺が住居地域である高台に位置しているので、窓からの眺望が高い建物で遮られることもない。

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