70年後に更地、それでも売れる―「定借マンション」人気の裏側。好立地でも手が届く「期限つき」という選択、メリットとデメリットを解説
次に、湾岸エリアの「ブランズシティ品川テラス」(総戸数216戸)を紹介しよう。JR「品川」駅港南口徒歩13分・東京モノレール「天王洲アイル」駅徒歩6分の地上14階建てのマンションで、売主は東急不動産、総合地所、よみうりランド、長谷工コーポレーションの4社。土地は、東京海洋大学の品川キャンパスの一部で、借地期間は約70年(大学と売主との借地期間は75年)。
ランニングコストとしては、管理費や修繕積立金のほかに、地代や解体準備積立金、定借事務手続業務費などがかかる。また、この物件では共用設備を絞り込んでいて、ワークラウンジと屋外テラス、ラウンジなどとなっている。
物件個別の特徴としては、首都高・モノレールをはさんで、同じ売主による所有権の分譲マンション「ブランズシティ品川ルネキャナル」が同時期に開発・販売されていること。

なお、いずれの物件も「定期借地権」と書いたが、正しくは「定期転借地権」となる。三井不動産レジデンシャルや東急不動産といった不動産会社が地主と定期借地契約を結び、その不動産会社が土地を転貸してマンションを販売する形になる。
定借マンションのメリットとデメリットとは?
さて、定借マンションは、土地の所有者が手放したくないが、有効活用はしたいという土地に事業化されるものだ。紹介した事例でいえば、企業や大学などがまとまった資金を得る目的で、土地の有効活用として定期借地にしている。そのため、得難い好立地に定借マンションが建つことが多い。
たとえば、かつて、世界遺産の1つに認定されている京都の下鴨神社の敷地内に、定借マンションが分譲されたことがある。こんな立地にマンションが建つのは、定借ならではのこと。すべての定借マンションが希少立地とは限らないが、好立地に分譲される場合が多いというのが、定借マンションの大きなメリットだ。
一方、定借マンションのデメリットは、期限が来たら更地で返還しなければならないこと。借地期間が50年間であれば、50年後には住んでいるマンションが取り壊されるので、住めなくなる。
他方、そのために所有権のマンションよりも、1~2割程度、価格が安いと言われている。近年は新築マンションの価格が高騰しているので、好立地の割安な定借マンションは魅力的に見えるだろう。
ただし、契約期間が当初の50年程度から、最近では70年程度に長期化している。利用価値が高まったことで、所有権との価格差が小さくなっているともいわれている。
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