そもそも、小鹿野町はバイクのツーリングコースとして知られていたが、一部のライダーが週末に地元名物「わらじカツ丼」を提供する飲食店に立ち寄る程度で、多くのライダーが町を素通りしていた。
そこで、ライダーに立ち寄ってもらう仕組みづくりをすることで、町での経済効果を創出しようと考えたわけだ。

最初に手がけたのは、「ライダーにとって居心地の良い町」「ライダーを歓迎する雰囲気作り」の一環として、屋根付き・ロッカー完備の駐輪場の整備だった。
予算は埼玉県のふるさと創造資金の補助金から捻出し、民間事業者によりバイク専用駐輪場を設置する動きが出てきた。
ところが、小鹿野町全体として見れば「町民からの風当たりはとても強かった」と、強矢氏は当時を振り返る。
警察との連携で「やんちゃなライダー」減少
行政がこうした施策を進めることに「ナンセンスだ」とか「町に暴走族を集める気か」といった苦情の電話が、町役場で鳴り止まなかったという。
実際、町でバイクイベントを行うと「(強矢氏いわく)やんちゃなライダー」も集まるようになり、町民の反発の火に油を注ぐ形となってしまった。
そうした厳しい状況の中で強矢氏は「何度も心が折れそうになった」というが、それでも打開策を必死で考えた。
たとえば、民間事業者や個人を交えた実行委員会のあり方、そしてウェルカムライダーズという組織づくり、そして大きなポイントとなった地元の小鹿野警察との連携だ。

バイクイベント開催時は、白バイやパトカーによる町内パトロールを充実させることで、町民に対する安心感を得ようと必死で活動を続けていくと、「やんちゃなライダー」は徐々に減少。
バイクで小鹿野町にやってくる人たちが交通ルールを厳守し、マナーを守ったツーリングを心がけるようになっていったという。
そうなっていくと、地元の飲食店などからは町に「訪れる人が増加して売上が増えた」「地元の人とバイクで訪れた人との交流で町が活性化する」といったポジティブな声が聞こえるようになっていく。
また、バイクに乗る人たちの側にも変化が生まれていた。
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