JR東日本が重視する「ステークホルダー」は誰だ? 運賃改定、従業員給与、株式配当を分析してみると…
さらに、この社員は、公聴会の場で運賃の値上げについて社員への説明が不十分であるという指摘をしたところ、喜勢陽一社長から以下の説明があった。
「今回の申請内容に関する情報は法令上弊社の経営に関する重要事実に該当し、社内外に対して厳格な情報管理を求められているものであることから、当然ながら、事前に社員にその内容を周知することができる性質のものではありません。私どもの経営姿勢を問われる筋合いではありません」
「申請後、その公表と同時にお客様から御質問を寄せられることを想定し、速やかにプレス資料や補足資料のほか、申請概要や運賃改定のポイントを絞った資料を全社員に送付し、社員周知を図っております」
筆者は「社員から経営姿勢を問われる筋合いはない」という部分が気になった。
株主の影響はあるのか
最後に株主との関係について考えてみたい。
2021年度と2022年度は、純利益が赤字となったにもかかわらず無配とはせず、合計で755億円の配当を出している。JR東日本の外国人株主比率は30%を超え、配当金の3分の1近くは日本の鉄道を利用しているかどうかも疑わしい外国資本に流れている。
昨今の鉄道事業に対する過度のコストカットは外国人投資家の要求によるものという可能性はあるのだろうか。機関投資家など外国人株主の状況に詳しい事情通は「彼らは利益を出せとは言うが、赤字路線を廃止しろとまでは言っていない」と話す。
その理由は赤字ローカル線を廃止したところで経営改善の効果はたかが知れており、そもそも外国人投資家は日本の地域鉄道の事情をよく理解していないからだという。つまり、JR東日本の鉄道事業に対する姿勢は、利益を重視する外国人投資家に忖度した結果であるとも言えなくもない。
企業が株価を高めたい動機は、新株発行による資金調達の際に株価が高い方が発行する株式数を減らすことができるからだ。しかし、既存の株主にとっては新株発行によって自分たちの持ち分割合が減るので、資金調達は銀行借り入れや債券発行で行ってほしいというのが本音だ。
JR東日本も「上場以来、資金調達を目的とした新株発行は行っていない」といい、今後の資金調達についても「国内債・銀行借り入れのほか、外債やサステナビリティファイナンスなど負債を中心とした資金調達の多様化を進めており、公募増資は検討していない」という。
公募増資をしないのであれば株価を高くする必要はないが、投資家は株価を高くすることを要望している。こう考えると、JR東日本は株主のほうを向いて経営しているように見えてくる。
とはいえ、京葉線の通勤快速の廃止に代表されるように鉄道サービスが低下すれば、乗客との関係が悪くなるだけでなく、企業のブランドイメージが毀損され、株価にも影響を与えかねない。
JR東日本が持続的な成長を進めていくためには、乗客や従業員がより幸福になれるような取り組みをもっと進めるべきではないだろうか。
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