JR東日本が重視する「ステークホルダー」は誰だ? 運賃改定、従業員給与、株式配当を分析してみると…

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2025年2月27日に国土交通省の運輸審議会で、JR東日本の運賃値上げに関連した公聴会が開かれた。この公聴会には、利用者の代表として弁護士、旅行会社社員、JR東日本社員の3人が出席し、運賃値上げに対して反対の意見を表明した。主な反対の理由は、JR東日本の業績が好調の中で、運賃の改定率が適正利潤を著しく上回る恐れがあることや、運賃値上げの根拠となる総括原価の算定方法が不明確であることなどである。

鉄道運賃水準の算定根拠となる「総括原価」については、2024年4月に国土交通省で算定方法の見直しが行われている。新しい算定方法では今まで原価として認められていなかった研究開発費や減価償却費の前倒しの原価への算入が可能となったが、厳格な基準がないことから原価の算定については利用者よりもJR東日本の意向を反映しやすい内容となっているように思われる。

こうした点については、公聴会の中でも弁護士の公述人から「企業会計上認められない前倒しの償却を原価に算入」する点や、研究開発費として平年度単価606億円が原価として算入されていることについて「研究開発の成果として得た特許権等により得たライセンス収入は、必ずしも総括原価に対する収入に計上されていない点」は、原価を盛っていることになり問題があると指摘された。

国交省の回答は?

筆者が国土交通省鉄道局に対して、この指摘は是正されたのか確認をしたところ、「総括原価に算入されている」と回答した。総括原価への算入が正当化された理由については、「持続可能な鉄道事業の実現に資する研究開発を促進するためで、特許権に伴う収入については、過去の実績を基礎として収入(運輸雑収)に計上されることになっている」。減価償却費については、「政策的に必要性の高い設備投資(国土強靱化関係、安全対策関係、環境対応関係、DX関係等)の加速化を図るため」といい、公述人の指摘に対する正面からの回答を避けた、なお、運輸審議会の会長代理は元JR東日本の関係者が務めている。

鉄道運賃値上げについては、沿線人口の減少から鉄道利用者が減少することも理由に挙げられているが、JR東日本が公表している資料からは矛盾した記述もみられる。同社が2024年12月6日に公表したプレスリリースでは、鉄道旅客輸送量の見通しについて、予測を以下のように発表している。

・2025年度 122,543百万人/キロ
・2026年度 120,665百万人/キロ
・2027年度 121,456百万人/キロ
・2028年度 121,957百万人/キロ
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