植田日銀総裁、利上げ判断でジレンマに直面。高市総裁誕生で日銀を取り巻く政治環境に厳しさ
植田総裁は、政策のドグマを繰り返すのではなく、日銀の考えを自らの言葉で伝えるというコミュニケーションスタイルを用いて、そうした予想を超える成果を上げてきた。
JPモルガン証券の藤田亜矢子チーフエコノミストは「おそらく植田総裁がサプライズなど狙わず、丁寧にコミュニケーションを取ろうとしていることが助けになっていると思う」と分析した。
植田総裁は、24年夏の世界的な市場混乱の後、日銀のメッセージ伝達を強化してきた。当時の利上げは一部で予想外と受け止められ、市場混乱の一因となった。だが混乱の主な要因は、米国の経済データを受けて米金融政策の見通しが変化したことだったとみられる。
高市、植田両氏とも、米連邦準備制度理事会(FRB)やトランプ大統領の認識を含めて今後の米国の政策を注視していく必要がある。特に円安が進行した場合は注意しなければならない。
「日銀は後手に回っている」
トランプ大統領は、日本が自国の利益のために為替を操作していると繰り返し主張している。またベッセント米財務長官は8月、ブルームバーグに対し、日銀は後手に回っていると述べた。米財務長官からそうした発言が出るのは極めて異例だ。
ニッセイ基礎研究所の上野氏は、日本がまだデフレ環境だったのなら問題はないが、円安やトランプ大統領、インフレという現在の環境下で、高市氏がこれまでの見解に固執するのは難しいと語る。
JPモルガン証券の藤田氏は、「日銀はFRBと同じような間違いを起こすリスクがある。インフレが何年も高止まりする可能性があり、植田総裁にとってより大きな挑戦となり得る」と分析。またETF売却に関する植田総裁の計画にも懸念がある。売却に100年以上かかるのは、多くのエコノミストや政治家にとって長過ぎるように思われる。
元日銀調査統計局長の亀田氏は、高市氏の下で追加的な歳出計画が実施され、利回りが急上昇した場合、日銀は国債購入の縮小ペースを調整しなければならなくなる可能性が高いとみる。
「植田総裁が大規模緩和の巻き戻しを相当うまくやってきたことは認めなければならないだろう。ただ、まだ終わりではない。火はくすぶっている」と亀田氏は述べた。
著者:藤岡徹
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