植田日銀総裁、利上げ判断でジレンマに直面。高市総裁誕生で日銀を取り巻く政治環境に厳しさ
植田氏は既に市場の予想を大きく上回る成果を上げている。長短金利操作を撤廃し、国債買い入れの減額を進め、その他リスク資産の購入を停止した。さらに上場投資信託(ETF)の売却も決定。これら全ては、任期半ばに達する前に行われた。
その間、政府当局者からの圧力とは事実上無縁だった。インフレが続く中、金利をマイナスの領域から緩やかなペースで引き上げるのは理にかなっていると、多くの人は捉えてきた。

そこに高市氏が現れた。同氏は昨年、日銀の政策を巡り「金利を今、上げるのはあほやと思う」と発言。高市氏が首相になれば利上げにブレーキをかけるとの見方が市場に広がった。高市氏は、今月半ばに予定される首相指名選挙で首相に選出される見通し。
利上げを「慎重」に進めて欲しい
ニッセイ基礎研究所の上野氏は、「植田総裁の任期前半については前向きな評価だ。正常化をうまくやってきた」としつつ、「今後は高市さんになり、より難しい課題に直面するだろう。日銀としては高市氏が政策変更のたびに何か口を挟んでくるのかどうか気にしなければならない」と述べた。
高市氏の勝利により、日銀が今月の会合で利上げに動くとの観測は大きく後退した。9月会合では審議委員2人が利上げを主張し、政策金利維持の決定に反対。また同月下旬には、慎重なハト派と位置付けられている審議委員が利上げに前向きな発言を行った。そうした状況を受けて市場は1週間前、10月利上げの確率を68%と織り込んでいた。だが10月7日の時点では確率は20%をわずかに上回る程度に過ぎない。
市場の見方の変化は、高市総裁の経済ブレーンの1人である本田悦朗元内閣官房参与によって裏付けられた。本田氏は6日、ブルームバーグのインタビューで、10月の利上げは困難との認識を示した。高市氏は日銀に利上げを「慎重」に進めて欲しいと考えていると、本田氏は説明。一方で、12月会合については0.25ポイント引き上げても問題はないとの見解を示した。