植田日銀総裁、利上げ判断でジレンマに直面。高市総裁誕生で日銀を取り巻く政治環境に厳しさ
本田氏は安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の立役者として知られる。アベノミクスが始まった当初、日銀と政府はデフレ脱却を目指した共同声明(アコード)を公表。この共同声明は現在も継続している。
本田氏は、共同声明の変更を急ぐ必要はないとの考えだが、高市氏は今月の会見で「今のアコードがベストなものかどうかしっかり考えていきたい」と発言。日銀と政府との今後の関係に検討の余地が生じる可能性があることが示唆された。
これまでのところ、高市氏は日銀と財政出動の双方についてメッセージをトーンダウンさせている。6日には円が大幅安となり、超長期金利は上昇したが、7日はより落ち着いた動きとなった。
高市氏が自民党幹事長に鈴木俊一総務会長、副総裁に麻生太郎最高顧問を起用したことも、市場が落ち着きを取り戻した理由の一つだ。いずれも財務相を経験した両氏の存在は、高市氏が財務省の了解を得ずに財政出動や減税に乗り出す可能性が低いことを示唆している。
独立性を巡る懸念は行き過ぎ
また一部のエコノミストは、日銀の独立性を巡る懸念は行き過ぎだとみる。
元日銀調査統計局長でSOMPOインスティチュート・プラスの亀田制作エグゼクティブ・エコノミストは「高市さんが何を言うか見てみないといけないが、日銀が利上げをすべきだと考えている時にそれを大幅に何カ月も遅らせるようなことは考えにくい」と語った。
利上げのタイミングを巡る議論は、植田総裁がいかに大きく前進してきたかを示している。
植田氏が2023年4月9日に総裁に就任した時、日銀ウォッチャーは、植田氏が市場の動揺を引き起こさずに2%のインフレ目標を達成し、近代史上最も積極的な金融緩和策を解除するのは不可能に近いと考えていた。緩和策の枠組みを取り払うには、総裁としての全任期が必要になるかもしれないとの見方もあった。