「パフォーマンスじゃないのだが…」、"高速餅つき"大人気の陰で店主が苦悩するもっともな理由。一斉にスマホで撮影、見せ物化する伝統文化

きなこをつけるのは手作業(写真:中谷堂提供)
しかし今、中谷さんが頭を抱えているのは、この餅の品質を左右する原材料の確保だ。特に、核となる高品質な愛媛県産のよもぎの確保量が、年々不安定になっているという。
不安の背景にあるのは、第1次産業の衰退である。収穫を行う生産者の高齢化や、働き方改革の影響による人手不足、1人当たりの作業量の減少などが影響している。
この危機感から、中谷さんは「見に行かずにはいられない」という思いで、ほぼ毎年自ら産地に足を運び、生産者や加工業者との信頼関係を築いている。

ボイルし、瞬間冷凍したヨモギを使う(写真:中谷堂提供)
「どこの誰が作ったのかわからないものを使うのが嫌なんです。よもぎの生産者さんが『この間、中谷堂が取り上げられてるのをテレビで観たよ!』とか、そういう話もできるからね」

つきたての餅、いかにも美味しそうだ(写真:中谷堂提供)
観光客の安全を守る「見えないコスト」
奈良駅近くに自宅兼事務所を建てるまでに事業を成長させた中谷さんだが、悩みの種は尽きない。
店は奈良公園に通じる三条通りに面しており、国内外の観光客で賑わう場所だが、中谷さんが「昔と比べて、車がガンガン通ります」と懸念するほど交通量が増えたのだ。

警備員を雇って交通整理をしている(写真:筆者撮影)
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