「パフォーマンスじゃないのだが…」、"高速餅つき"大人気の陰で店主が苦悩するもっともな理由。一斉にスマホで撮影、見せ物化する伝統文化
中谷さんにもその声が聞こえていた。インタビューの中で彼は「よくあること」と言いながら、こう語った。
「外国の方にしたら、どこか芸のように映るんやろうね。どのように捉えられても仕方ないけれど、別に芸として見てもらおうとやっているわけじゃない。純粋に日本古来のお餅つきとして見てくれるのはありがたいけれども、滑稽に映るのは嫌やなと思いますね」

かつては過度に盛り上がる客に対して、「静かにしてもらえますか」と注意したこともあった。だが、ネットで「中谷堂に怒られる」という口コミが出たため、今は何も言わなくなったそうだ。それでも、彼の心の中は「毎日葛藤との戦い」だと言う。
「高速餅つき」は、つきたての餅を食べるという最優先事項のためにあくまでも真面目にやっていること。決して、笑わせようとしているわけではないのだ。
品質を追求するからこそ直面する「供給不安」
中谷堂が、この強烈なパフォーマンスだけで終わらないのは、よもぎ餅の職人らしいこだわりが徹底されているからだ。
あんこには北海道産の十勝大豆を使用し、炊いた後に一日寝かせて熟成させたものを用いる。もち米は佐賀県産のひよく米を8時間ほど水に浸して蒸し上げ、愛媛県宇和島のよもぎの新芽と合わせ、人の手によって餅をつく。


その後、専用の包餡機であんこを餅で包み、きな粉をまぶして、よもぎ餅が完成。この手間暇を惜しまない工程こそが、美味しさの根源である。
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