トヨタ「ウーブン・シティ」現地取材で感じた違和感の正体はどこに?

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トヨタが、自動車メーカーからモビリティカンパニーへの転換を主張して久しい。

その中で、10年先を見越した方向性について、2024年3月期決算発表の際、佐藤恒治社長は自動車産業関連にこだわらないさまざまな分野での「戦略的パートナーシップ」の構築を目指すことを強調した。

ウーブン・シティでのインベンターズでも、トヨタグループ以外から、日清食品、ダイドードリンコ、ダイキン工業、増進会ホールディングス(Z会)、UCCジャパン、共立製薬、インターステラテクノロジズ、それにシンガーソングライターのナオト・インティライミ氏が参画している。

今回の取材ではそれぞれが属する産業の現状と今後の予測、それにともなう実証への思いがうかがえた。

「e-Palette」のキッチンカーで栄養最適化テクノロジーを実証する日清食品(筆者撮影)
9割を自販機の販売で事業を行うダイドードリンコは、オンライン決済で購入でき、周りの風景に溶け込むデザインの自販機を設置(筆者撮影)
UCCジャパンは、コーヒーを飲む様子を撮影してAI解析し、コーヒーの香りや味わいなどが集中力や作業効率に与える影響を分析する(筆者撮影)

各社とも「まずはやってみる」という大きな決断を下して動き出したばかりで、「いまいまではワクワクしている」という雰囲気だ。

そんな中で今後、期待したいのは、前述での「地域社会課題」と同様に「人として本音のぶつかりあい」である。

国や自治体で行う実証試験で多く見られるような、体裁を整えた報告書を出口とするのではなく、「人間らしいトライ&エラー」の経緯を外部に対して示してほしい。

豊田佐吉翁のフィロソフィー

自動車産業界の変革のキモは、従来のような大量生産・大量消費型に偏らない、新車販売後を含めたバリューチェーンでの新しいビジネスの創出にある。

これも、「言うは易く行うは難し」ではあるが、インベンターズにはウーブン・シティに、時として厳しく、また時として柔軟に対峙しながら、粘り強く実証を続けていただきたいと思う。

今回のローンチイベントの入口。さまざまな模様の繊維が織りなすトンネルを表現(筆者撮影)

ウーブン・シティのウーブン(Woven)には「織り込まれた」という意味がある。

そこには、トヨタグループ創業者の豊田佐吉翁が発明した豊田式木製人力織機を起源として、「自分以外の誰かのために」人に寄り添い・その人にとっての幸せを生み出す、というトヨタのコア・フィロソフィーが織り込まれている。

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式典の入口やステージ上部に織り込まれたカラフルな繊維。それが「人と人が織りなす社会」を表しているのだと、ウーブン・シティ取材の終盤でやっとわかった気がした。

ウーブン・シティでの「カケザン」がどんな未来を生み出すのか。今後も定期的にこの街を訪れてみたい。

【写真】Toyota Woven Cityで行われるさまざま企業の実証(18枚)
桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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