トヨタ「ウーブン・シティ」現地取材で感じた違和感の正体はどこに?

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トヨタは「モビリティのテストコース」という表現を使ってはいるが、各種の移動体としてのモビリティがポップアップして見えることはなく、モビリティはあくまでも「生活を支えるツール」という控えめな存在だと感じる。

ここならば普通に生活ができそうだ、という雰囲気があるのだ。

周囲には裾野市の工業団地や一般住宅などがあるが、ウーブン・シティのセキュリティゲートから外に出ても、未来から現代に舞い戻った浦島太郎のような気持ちにはならない。

ウーブン・シティは、あくまでも裾野市のひとつの「地域社会」という位置付けを大事にしているのだと感じた。

トヨタが新開発した立ち乗り式3輪EV(名称はまだない)が走行する様子(筆者撮影)

そのうえで、ウーブン・シティの中での「カケザン」と、ウーブン・シティとその周辺の人との「カケザン」が起こる。

一般的に「地域社会」では、良くも悪くも人の気持ちがぶつかりあう。人同士の「相性」や物事に対する「好き嫌い」も生まれる。

そうした中で、町内会、自治会、学校、企業、そしてそれぞれの家庭の中で、その地域で暮らす「すべ(方法・手段)」を模索していくのが地域社会の現実だ。

現実を「データ」ではなく「声」として

ウーブン・シティでは、さまざまな実証を行う企業や芸術家・アーティストなどを「インベンターズ(開発者)」と呼び、そこで暮らす人や訪問者を「ウィーバーズ」と呼ぶ。

形のうえでは、インベンターズが新しいサービスや商品を提示し、これらに対してウィーバーズがフィードバックをするという関係性ではあるが、第1次実施地域(フェイズ1)で居住予定の約300人は明確に「地域住民」なのだから当然、さまざまな「地域社会問題」が出てくるはずだ。

キッチンカーなどが出るマルシェが行われた(筆者撮影)

そうした「地域社会問題」について、すべてを明らかにするというのは「人への思いやり」の観点から避けるべきかもしれない。

それでも、できるだけ多くの現実を単なるデータとしてまとめるのではなく、人々の声としてウーブン・シティ外部でも聞こえるようにするべきだろう。

これは、「言うは易く行うは難し」大きな壁だと思うが、新しい技術を踏まえた新しい生き方を考える「新しい地域社会構想」を掲げるウーブン・シティとしては、ぜひ実現していただきたい重要なポイントだ。

2つ目の大きな壁は「自動車産業の抜本的な変革への壁」である。

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