沖縄はソフトパワーで飛躍する
特に、「東京よりは、アジアのほうが可能性はある」。東京で浸透させるよりも、地域的なメリットを生かして、東京とは等距離にあるアジア各国で展開したほうが早いとの思惑だ。映画はすでにシンガポールやマレーシア、インドネシア、タイ、ブルネイで公開が決定。「海外版・琉神マブヤー」も近日中に制作される予定だ。
ストーリーも、どこか牧歌的だ。「琉神マブヤーは、基本的に敵を殺さず、最後は許す。このコンセプトはアジアでより受け入れられると思う」(古谷野氏)。勧善懲悪を徹底させる欧米流のストーリーよりも、マブヤーはアジア的だという。
ゲームやウェブなどデジタルコンテンツ分野でも、海外に向けた取り組みがある。世界最大級のモーションキャプチャースタジオを持つCG制作会社・CGCGスタジオの山添武取締役は09年、同業者らと「沖縄ゲーム産業振興ネットワーク」(GION)を立ち上げた。目的は県内のデジタルコンテンツ人材の育成。「コンテンツ産業には労働集約的な仕事が多いが、そこから一歩進んで、沖縄からコンテンツを自己発信できるようにしたい」と山添氏は言う。
彼が見つめる先もアジアだ。すでに動き出している。日本貿易振興機構(JETRO)の「地域間交流支援事業」においてGIONが支援対象に選ばれ、今後、シンガポールのゲーム関連団体と連携して、国際共同制作プロジェクトや、ASEANやイスラム諸国を見据えた海外市場の開拓に本腰を入れていく。
具体的には、GION会員企業の一つ「エンジンズ」が進めている「食育」をテーマにしたコンテンツ「ベジスタ」を、今年12月にシンガポールで開催することが決定。現地との相互交流で新作ゲームやキャラクター商品の開発プロジェクトを具体化することになっている。