ホンダの燃料電池車は、何がスゴイのか 先行するトヨタ「ミライ」を上回る性能

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5人乗り仕様とした「クラリティ・フューエル・セル」(撮影:風間仁一郎)

一方のホンダは栃木県高根沢町の拠点で年間200台の生産から開始する。当初は官公庁や企業へのリース販売になるが、既に200台の枠はほぼ埋まっている状況だ。将来的には埼玉県の量産工場に生産を移管するが、個人への販売は早くても2017年度になる。

リースからの販売にしたことについて、ホンダでパワートレイン開発を統括する三部敏宏執行役員は、「だいぶ品質問題で勉強したので、絶対の品質で出すためにも慎重に立ち上げていきたい」と話し、2013~2014年に相次いだ基幹車種「フィット」などの品質問題が影響したことを認める。

年間の生産台数が少ないのにも理由がある。「一番難しいのは燃料電池」と清水・主任研究員が語るように、板状のセルを400枚近く積み重ねて構成する燃料電池を安定的に量産できる技術はまだ確立できているとはいえない。FCVの価格が高いのもそのためだ。

FCV普及にはインフラ整備が課題

FCVの普及に欠かせないのが水素ステーションだ。整備費は1ステーションあたり4~5億円かかるとされ、一般的なガソリンスタンドの5倍以上と非常に高額だ。国は整備費の2分の1を補助するなどして、2015年度中に累計で100カ所の水素ステーションを整備する目標を掲げる。4大都市圏を中心に28カ所が開所済みで、計画を含めると、年度内に81カ所にまで増える。

年間3000万~4000万円かかるとされる人件費や修繕費などのランニングコストについては、3分の2(2200万円上限)を国が、3分の1(1100万円上限)を自動車メーカー3社(トヨタ・ホンダ・日産自動車)が補助する。自動車メーカーとしても水素ステーションの普及をただ待つのではなく、「花とミツバチ」のような共生関係を前提に、普及を後押しする。

世界的に環境規制が厳しくなる中で、自動車メーカー各社は、ハイブリッド(HV)や充電が可能なプラグインハイブリッド(PHV)、電動自動車(EV)などエコカーの開発にしのぎを削る。ホンダは全方位で開発を進めているが、「今のガソリン車とまったく同じ使い勝手で、CO2の発生がゼロという観点では、FCVがエコカーの究極の形」(三部執行役員)と考える。自前での開発にこだわりがあるとされるホンダにあっても、FCVについては、米ゼネラルモーターズ(GM)と基幹部品を共同開発するほどの力の入れようだ。

発表会で八郷社長が語ったように、FCVが当たり前の乗用車として普及する時代が来るのか。その先鋒として登場するクラリティ・フューエル・セルが背負うものは大きい。
 

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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